あの挫折の先に

2012年8月30日

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夏目幸明 (なつめ・ゆきあき)

ジャーナリスト

1972年、愛知県生まれ。愛知県立豊橋工業高校から早稲田大学へ進学、卒業後、広告代理店に入社し、その後、雑誌記者へ。小学館『DIME』に『ヒット商品開発秘話 UN・DON・COM.』を、講談社『週刊現代』には、マネジメントの現場を描く『社長の風景』を連載。ほか、明治学院大学講師をつとめ就活生の支援を行う。『資格の学校TAC』では、就活生と一緒にエントリーシートを書き、面接練習を行う講座を持つ。
執筆記事:「社長の風景」(現代ビジネス)、「火力発電所奮闘記」(『VOICE』)、「ビジネスの筋トレ」(『フレッシャーズ』)、「就職活動セミナー」(『資格の学校TAC』)

人は“納得がいけば”味方になってくれる

 相手に協力をしてもらうためには、仕事内容を一から十まで細かく、丁寧に説明しなければいけない。寺尾はこの“人を動かす法則”とでも呼ぶべきものを身に付けて以来、仕事相手から信頼される存在に変わっていけたと話す。

 「ポイントは事前の準備でした。例えば現場に工事の内容を説明する際には、作業する相手が何を疑問に思うかをあらかじめ予測し、それに対する答えを用意するなど、『想定問答集』を作ってから説明に行くようになりました」

 すると、問答集を作る過程で“ここを伝えておかないとミスが起こるかもしれない”と、それまで気付かなかった指示の抜け、漏れを見つけられることもあった。このような丁寧な仕事を繰り返すうち、相手も「キミに説明されると、作業中に“ここどうだっけ?”と悩むことがない」と寺尾を信頼し、動いてくれるようになった。

“いかに相手を落とすか”なんて考えてはいけない

 さらに、この“想定問答集を作る習慣”は、彼の役職が上がり、他社へ事業のプレゼンをする際にも大きな力を発揮したという。

 「皆さんも、他社や上司へのプレゼン中に質問を受け『持ち帰ってあらためて回答します』となった場面がありませんか? すると、出席したみなさんに『あの人は分かってない』という印象を与えてしまい、同時に、検討結果をいただくまでに無駄な時間を費やす原因にもなってしまいます。私は、プレゼンの前夜にプレゼンをする夢を見たほど、相手からの質問を考え抜きました」

 その結果、彼はある考えに至る。プレゼンのコツは“説得をしないこと”だと言うのだ。

 「相手に提示すべきデータが足りずに納得してもらえず、その場で一生懸命、説得をするようなプレゼンでは、うまく行くものも行きません。むしろ、どんな質問にもその場で答え、相手と信頼関係を築くことが重要なのです。たまに、他社へプレゼンする時“いかに相手を落とすか”などと表現する方もいますが、それは間違いで、相手が納得いくまで説明しきれば、相手は“ここまで分かりやすく説明してくれたのだから”と味方になってくれます。納得がいけば味方になってくれる、納得がいかなければ、真剣に取り合ってくれない。人間は、そんな一面を持っていると思うのです」

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