解体 ロシア外交

2012年8月31日

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 さらに、プーチン氏はグルジアに侵攻する準備は事前にできていたとも述べた。曰く、軍の参謀は、グルジアに対する軍事行動の計画を2006年末準備し、プーチンがそれを2007年に承認していたというのだ(グルジア紛争の直後にプーチン氏の元顧問は、プーチン氏はグルジアへの攻撃を4年前には決心していたとも述べているので、これは事実と思われる)。兵器や軍事要員を用意するだけでなく、南オセチア「軍」の訓練も、ロシア軍と共闘できるように訓練されていたという。

 つまり、きちんと準備ができていたのだから、ゴーサインを出せばすぐにロシア軍は対応できたのに、メドヴェージェフ氏はそれをしなかったと言っているようにも理解できよう。ロシア情勢をウォッチするカーネギー財団モスクワ・センターのニコライ・ペトロフ研究員によれば、「メドヴェージェフの対応にプーチンは怒っており、彼はそれを表明したのだ」という。

 他方、開戦時にロシア大統領、すなわちロシア軍最高司令官であったメドヴェージェフ氏は、これまで、南オセチアへの軍事介入は 「誰にも相談せず、自分だけで決断した」と一貫して主張してきたが、今回のプーチン氏の発言は、メドヴェージェフ氏の説明と矛盾する。

メドヴェージェフもすかさず反論

 だが、メドヴェージェフ氏も速やかに対応した。

 やはり8月8日、開戦4周年として南オセチアを訪問していた氏は、ロシアは今後もアブハジアと南オセチアの国家承認を決して覆さず、フルサポートを続けると約束すると同時に、自らがロシア軍の派遣を決断したのは「グルジア軍の活発な軍事行動が開始されてから2時間半後」で、時期は適切であったとした上で、その決定が遅すぎたとの指摘は「実情を知らないか、意図的な歪曲だ」と反論したのである。さらに氏は、介入の決断についてはプーチン氏と相談したものの、完全に一人で、速やかに行ったと述べて、前参謀総長やプーチン氏の主張に躍起になって反論しているのである。

 実際、もし、プーチン氏の主張が真実であり、メドヴェージェフ氏が介入することを躊躇し、3日間も悩み、その結果、死者数(162人の民間人と67人のロシア軍や平和維持軍の人員)を増やしていたとなれば、メドヴェージェフ氏の国家元首としての資質が疑われ、政治生命に打撃となることは間違いない。

 だが、少なくともメドヴェージェフ氏は最近まで「誰にも相談せず」自ら決定したと述べていたのに、今回、プーチン氏への相談を認めたことで、全般的にメドヴェージェフ氏の主張の信憑性が揺らいでいるといえる(但し、メドヴェージェフ氏は、自身の主張が全て正しいにもかかわらず、プーチン氏の顔をつぶさないために「相談はした」という新たな説明をし始めた可能性も否めない)。

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