解体 ロシア外交

2012年8月31日

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映像はプーチン関係者によるもの?

 グルジア紛争開戦から4年後に、当時の軍事行動開始を巡って奇妙な動きが出てきたことはおわかりになったと思う。しかし奇妙である。4周年という節目の時期であるとはいえ、外交に関わる事実を公開するにはあまりに早く(外交記録公開文書も国に20~30年後に公開するのが普通だろう)、また重要な事実を公にするという趣旨であれば、「今更」という感じがするほどの遅さだ。

 それにもかかわらず、そのドキュメンタリー映像が公開されるやいなや行われたプーチン氏のプレスサービスが、この映像は「本物のドキュメンタリーだ」とお墨付きを与えているのである。こうなってくると、プーチンないしプーチンに近いものが作成した可能性も否めないだろう。

 4年も前のことであるにもかかわらず、また、諸外国からの圧力があったとはいえ、拙稿「ロシア WTO加盟の舞台裏反対のグルジアが受諾した理由」のようにグルジアがロシアのWTO加盟を認めるなど、徐々に対話ムードが生まれてきている状況であったにもかかわらず、当時の詳細が蒸し返されたことの背景には、明らかに政治的意図があったと思われるのである。

メドヴェージェフ失脚の地ならしか

 つまり、この一連の動きがメドヴェージェフ氏の立場を悪くするために仕組まれたと考えるのは穿った見方だろうか。プーチン氏がメドヴェージェフ氏に見切りをつけ、失脚の地ならしをし始めたとは考えられないだろうか。

 その一つの根拠として、前出のペトロフ氏が、「プーチンはメドヴェージェフを変えざるを得ないかもしれない」と言うように、専門家の間でもメドヴェージェフの更迭説が囁かれている。加えて、最近、プーチン氏は、メドヴェージェフ氏が大統領時代から推進してきた近代化路線にも攻撃を始めている。

 他方、ドキュメンタリービデオでメドヴェージェフ氏を批判したバルエフスキー氏はグルジア紛争の直前の2008年6月、メドヴェージェフ大統領から軍参謀総長を解任されていた。解任の理由としては、軍改革を巡ってセルジュコフ国防相と対立していたこともあったという。

 バルエフスキー氏は、自身が解任されたことで、メドヴェージェフ氏に反感をいただいていたとしても不思議ではない。そのようなところに、プーチンないしプーチンに近い人物などから、取引、すなわちメドヴェージェフ氏を陥れる証言を行うことを持ちかけられた可能性も否定できないだろう。同時に、元々「その場しのぎ」的な要素があった政権だが、予想よりずっと早くメドヴェージェフが見限られた可能性も否定できない。

 他方で、市民が高めている軍に対する不満のガス抜きをするため、また、国民の関心をそらして現在高まっている反プーチン運動を沈静化ために、このビデオが作られたと考えるロシアの専門家もいる。いずれにせよ、プーチンと軍の利益にかなった動きであることは間違いなさそうだ。

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