渡辺将人の「アメリカを読む」

2012年8月27日

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渡辺将人 (わたなべ・まさひと)

北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授

1975年生まれ。シカゴ大学大学院修了。米下院議員事務所、H・クリントン上院選本部、テレビ東京報道局「ワールドビジネスサテライト」、政治部記者、コロンビア大学、ジョージワシントン大学客員研究員を経て現職。専門はアメリカ政治。著書に『分裂するアメリカ』『オバマのアメリカ』(ともに幻冬舎新書)、『評伝バラク・オバマ』(集英社)、『見えないアメリカ』(講談社現代新書)、『現代アメリカ選挙の集票過程』(日本評論社)、共著に『オバマ政権のアジア戦略』(ウェッジ)、『オバマ・アメリカ・世界』(NTT出版)など。

 ライアン氏を副大統領候補としたロムニー氏に対して、再選を目指す民主党のオバマ大統領は中間層重視で雇用に焦点を絞った「大きな政府」による経済ポピュリズム路線を打ち出している。共和党の歳出削減の「小さな政府」路線と対比を鮮明にしていく構えだ。経済政策論争というよりも、「政府の大きさ」をめぐるイデオロギー分裂の色が過剰に増しているようにも思えるが、本選が本格化する今、時計の針を2010年中間選挙に戻してオバマ政権の経緯を復習しておきたい。

2010年中間選挙敗北で民主党下院少数派に

 2010年中間選挙は民主党にとって大敗北だった。連邦上院で民主党は7議席減、連邦下院では63議席減で共和党に多数派の座を譲った。新大統領の政権最初の中間選挙では必ず大統領側の党が負ける「与党敗北の原則」を考慮しても、あまりにも大きな敗北だった。ただ、オバマ大統領自身は、下院議席減は織り込み済みと考えていた、とオバマ周辺は語る。また、2006年の中間選挙で当選した民主党穏健派が議席を失うことは、「自然淘汰」のようなものだった。

 中西部や南部で選出された民主党穏健派議員は、選挙区が保守的な風土であることが少なくなく、必ずしも党執行部や大統領と足並みを揃えない。排出権取引に関するキャップ&トレード法案は、化石燃料に依存する保守的地域の民主党議員の思わぬ造反で頓挫した。オバマ路線に賛同しない民主党議員が淘汰されることは構わないと、オバマ周辺は高をくくっていたふしがあった。

 しかし、民主党の敗北規模は中間選挙では1938年以来という極端なレベルに達した。上院は改選枠が民主党に有利であったためかろうじて多数派を守ったが、下院のように全議席改選であれば敗北していただろう。敗因は医療保険改革、GM救済、大型景気刺激策などオバマ政権の矢継ぎ早の「大きな政府」政策であった。これに対し、ティーパーティ運動に勢いを得た保守派が反発した。

経済中道化路線
中間選挙後オバマ政権「第1期」

 焦ったオバマ政権は、共和党との超党派路線を目指して、経済政策で中道化に舵を切る「歩み寄り」の決断をした。これが中間選挙後のオバマ政権の「第1段階」(2010年中間選挙後~2011年秋)である。顕著だったのはビジネス界への接近だ。所得税と配当税の期限付きの減税2年延長、いわゆる「ブッシュ減税」の延長にも踏み切り、首席補佐官にJPモルガン・チェース出身のデーリー元商務長官を指名した。財政赤字削減にも「防衛費を除く経費を5年間凍結」として前向きな姿勢を示し、共和党ブッシュ政権でも完遂できなかった韓国、パナマ、コロンビアとのFTAの実現を約束した。

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