2024年4月24日(水)

ヒットメーカーの舞台裏

2012年9月17日

 だが、グループ内に類似の商品はなく、岡田も森永の研究所も手探りのスタートだった。岡田が要望するコンセプトに沿って、試作と評価・改良を繰り返すという工程で開発は進んだ。最初は、熱を加えないと固形化できないものや、粉末をまず水に溶かす必要があるものなどが、試作された。

鶏の照焼き、トマト、レタスの調理例

 これでは寒天などの従来品と同じであり、岡田が求める「常温にも対応し、固形化が速く、簡単にできる」という目標からは、かけ離れていた。開発陣はさらに、加える粉末の量が多すぎる、ミキサーによる攪拌時間が長すぎるといった岡田からのダメだしと格闘していった。

 岡田が並行して他の新商品開発に携わっていたという事情もあり、結局、成分の最終仕様を固めるには2年ほどを要した。その後、取引先の施設にサンプル品を使ってもらうと、評価は上々だった。「まとめるこeasy」は5種類の「増粘多糖類」と呼ばれる固形化のための原料と、それらを混ざりやすくするひとつの原料から成る。これにより、幅広い温度に対応し、食品との攪拌時間も30秒から1分程度と、短くて済むようにしている。

パンフレットづくりでも骨を折る

 岡田にとっては、製品仕様の完成後のほうが、「もっと大変だった」。セールスプロモーションも企画担当者の仕事であり、この商品の特質や調理の仕方を理解してもらうため、レシピ付きのパンフレットやホームページに掲載する調理方法などの動画を製作した。これも、施設向けの商品が主体の同社では、あまり例のないことだった。今度は上司から岡田が何度もダメだしされた。

 クリニコの新入社員は、基本的に営業部門からスタートする。岡田も3年半ほど経験したが、ライバル社に負けるのがとにかくイヤだったという。このため、営業現場で感じたことを基に「こんな商品を作ってほしい」などと、本社によく提案していた。「今思うと、失礼な新人だったと思う」と振り返るが、そのうち、「じゃあ君が商品を企画したら」と、本社の企画部門への配属となった。もっとも、モノが言えるだけの頑張りも見せていた。取材が終わっての帰り際、岡田は「あのー、自慢っぽいことなのですが、もうちょっといいでしょうか」と、困惑気味に話しかけてきた。入社2年目に発売された新製品の初年度セールスで、全国約200人の営業担当者のうち、3位にランクされたのだという。


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