2024年4月20日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2012年9月7日

 それに対して、スタンフォード大学では講義と宿題でみっちりしごきます。たとえば、1時間の講義につき3時間分の宿題が出ます。コースワークを終えたあと博士資格試験を行い、それに合格した人だけが博士論文を書くことができるのです。

 アメリカの大学院教育は今も変わっていません。日本も90年代以降、大学院重点化により大学院教育に重きが置かれるようになりましたが、教育の中身そのものはアメリカのように体系立てられていません。日本の大学院では、各教官が自らの專門テーマについて講義をやって期末にレポートを書かせる。各教官の講義の中身は相互にリンクしていないのです。本来ならば、学生が履修する10科目(20単位)の講義は一体的なフレームワークをもってデザインされていなければなりませんが、そうなっていないのです。

――スタンフォード大学は環境的に素晴らしい大学であると聞きますが、いかがでしたか?

今野氏アメリカの大学のキャンパスは、どこも広々していて施設が充実しています。24時間オープンの図書館は当たり前ですし、キャンパスのなかにボーリング場、ビリヤード場、そしてゴルフ場までありました。そしてスタンフォードは気候が素晴らしい。1年中初夏だと言われていますが、30度を超えることは滅多にありません。冬も雨は降りますが寒くはありません。1年間同じペースで勉強ができます。ただ、勉強しやすく過ごしやすいということは、遊ぶにも最高の環境なんですね(笑)。

――実際にはどれくらい勉強されていたんですか?

今野氏アメリカで博士号を取得するには1万時間の勉強が必要だと言われています。私は深夜3時まで勉強し、朝の6時半か7時には起きるという生活で、1日に14時間勉強していました。平日に90時間、日曜日に6時間ほど勉強し、1年50週で約5000時間です。この生活を2年続けると1万時間になります。さらに、それとは別に博士論文を書くために約3000から4000時間を費やすことになります。

 アメリカでは、夏時間と冬時間が切り替わる日があります。その晩は、1時間余分に寝られるのです。そのことがすごく嬉しかったのは今も忘れられませんね。それくらい追い詰められた生活をしていたということです。この件に関しては、私と同じ時期にイェール大学に留学していた経済学者の野口悠紀雄(早稲田ファイナンス総合研究所顧問)さんも同じようなことを言っていました。私ですら1日14時間勉強していたくらいですから、“超勉強マシーン”の野口さんは1日16時間くらい勉強していたのではないでしょうか。

――それほどまでに猛烈に勉強したモチベーションはなんだったのでしょうか?

今野氏私は高校時代から、将来は大学で研究生活を送りたいと考えていました。私の父も大学勤めでしたので、その影響もあったのでしょう。大学に勤める条件は、博士号です。博士号は大学へのパスポートなのです。博士号がないと助手にはなれても助教授にはなれません。だから、どうしても博士号が欲しかったのです。


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