2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年9月13日

 確かに、サウジは戦時体制のような形で現状に臨んでおり、イグネイシャスは、その理由はサウジ王政が危機にあるからだと示唆しています。

 しかし、サウジ王政が危機にあるというより、サウジが今、地域情勢を自国に有利にするチャンスが来ていると考え、それをものにするために全力を尽くしていると見る方が、より適切であるように思われます。

 シリア情勢については、サウジは明確に反アサッドを打ち出し、反政権派に武器供与して支援しています。サウジがタラス将軍(シリアの国防大臣を長く務めたタラスの息子)の亡命を実現させたのは大きな成果です。シリアからイランの影響力を排除し、サウジの影響力を確立できれば、レバノンでの影響力を強めることもできます。サウジにとって、イランとの抗争、シーア派との抗争で有利な地歩を固める千載一遇のチャンスなのです。

 バンダールを諜報長官に任命したことは、サウジが積極的にこの状況に対処しようとしている証拠と見たほうがよいのではないでしょうか。

 サウジ東部でのシーア派については、サウジ王政は大規模なバラ撒き政策で不満を抑えてきましたが、更なるバラ撒きをする財政上の余力があるので、王政を揺るがすような大事には至らないのではないかと思われます。ただ、彼らをイランの手先とみなし、弾圧にだけ頼れば、かえって問題を大きくしかねません。同じアラブ人という民族的見地を強調し、宗派間の違いは際立たせない対応をするほうが適切でしょう。


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