子ども・家庭・学校 貧困連鎖社会

2012年9月12日

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青砥恭 (あおと・やすし)

NPO法人 さいたまユースサポートネット代表理事

1948年島根県松江市生まれ。元埼玉県立高校教諭、現在、埼玉大学、明治大学で講師。教育法、教育社会学、教育方法に関する論文多数。「子ども・若者と貧困」を独自の視点で研究している。2000年以降、地域で若者支援活動ののち、2011年、NPO法人さいたまユースサポートネットを設立し、居場所のない若者の支援活動を行っている。 著書に『日の丸・君が代と子どもたち』(岩波書店)、『ドキュメント高校中退』(筑摩書房)など。http://www.saitamayouthnet.org/

図3 ひきこもり経験者の不登校体験 (厚生労働省『地域精神保健活動のガイドライン 精神保健福祉センター・保健所・市町村でどのように対応するか・援助するか』2003年からグラフ作成。保健所・精神保健福祉センターに2回以上来所相談があった3293ケースを分析)
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 厚生労働省の調査(図3)によると、ひきこもりの相談があった3293件のうち、小学校、中学校のいずれかで不登校であったケースが1103件 (33.5%)、高校・大学まで入れると2023件(61.4%)が不登校を経験していた。ひきこもり相談者の不登校経験率は非常に高い。(厚生労働省 『地域精神保健活動のガイドライン 精神保健福祉センター・保健所・市町村でどのように対応するか・援助するか』2003年) ひきこもりが長期化すれば、学校や友だちとの関係もいっそう希薄化し、家族としか会話をすることもない、中には家族とも会話を交わさなくなるというケースもある。

 このようにひきこもりの長期化は家族以外の社会とのつながりが失われ、孤立化し、就労どころか、他者との会話すら困難になるという深刻度が増す。

 従って、就労支援も難しくなり、ひきこもりの当初は親にパラサイトすることで目立たないが、親の高齢化でそれが難しくなると、生活保護の受給に陥るリスクが高くなる。そうなると結果的には支援コストは巨額化し、社会は大きな負担をしなければならないことになる。

 多くのひきこもりの若者が、不登校を体験するが、その段階で早期の介入を行ったほうが長期的に見て支援コストは低下することは間違いないだろう。

「ひきこもり」「不登校」は心の問題か

 「ひきこもり」「不登校」といった問題は、これまで「心の問題」ととらえられがちであった。しかし、実際にはその背後に心理的な問題には還元できない困難が複合的に積み重なっていることが少なくない。しかも、最低賃金ギリギリで長時間勤務している保護者など困難さが深刻なケースほど、相談機関へ訪れる精神的・経済的余裕がないのである。

 経済的な困難、精神疾患や身体障害、低学歴、低学力、親等からの虐待やDVなど、多様な困難が何重にも重なっているケースは多い。従って、心理相談だけでは効果的な支援が難しい。

困難を抱える子ども・若者の「発見」を

 麻由美(仮名)は父親が自殺した後、貧しさの中で母親の虐待、ネグレクトで心に深い傷を負い、児童相談所の一時保護所、児童養護施設、精神病院を往復した成人女性である。小中学校では、他の子どもたちと同じような衣服や学校の道具を持てない麻由美の貧しさはいじめの対象になった。学力も低く、中学にはほとんど通えず、高校も中退している。

 麻由美のような子どもや若者には、心理相談だけでは自立のための支援は十分とは言えない。食事の作り方、食事作法、布団で寝るといっただれでもできるのが当たり前と思われるような日常生活への支援、小学校段階からの学び直し、他者とのコミュニケーションのトレーニング、そして就労支援など、通常、人が自立するために必要な社会的支援のやり直しが必要になる。麻由美のような子どもや若者が増えている。

 相談に来る余裕のない家庭の子ども・若者をどのようにして支援につなげていくかを考えていかなければならない。

 (1)現状では支援につながらない(つながれない)子ども・若者を発見し、(2)地域の居場所で見守り、(3)必要な場合には適切な専門機関につなげ、(4)相談者に応じて就労支援まで行う、段階的・包括的な支援を提供していく仕組みが必要となる。

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