子ども・家庭・学校 貧困連鎖社会

2012年9月12日

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青砥恭 (あおと・やすし)

NPO法人 さいたまユースサポートネット代表理事

1948年島根県松江市生まれ。元埼玉県立高校教諭、現在、埼玉大学、明治大学で講師。教育法、教育社会学、教育方法に関する論文多数。「子ども・若者と貧困」を独自の視点で研究している。2000年以降、地域で若者支援活動ののち、2011年、NPO法人さいたまユースサポートネットを設立し、居場所のない若者の支援活動を行っている。 著書に『日の丸・君が代と子どもたち』(岩波書店)、『ドキュメント高校中退』(筑摩書房)など。http://www.saitamayouthnet.org/

不登校は子どもが発する重要なサインの一つ

 まず、深刻な困難を抱える子ども・若者を「発見」することから始めなければならない。貧困、虐待、心身の不調や障害、ひきこもりなど、様々な困難を抱える子ども・若者がいるにもかかわらず、その多くは必要な支援につながることが出来ていない。

 家庭の貧困や虐待の中で心身に障害を抱えた子どもが、不登校になったり高校を中退したりする。困難は次なる困難を呼び、雪だるま式に深刻化していく傾向がある。

 貧困家庭の子どもが成長してからも低所得から抜け出せない「貧困の世代間連鎖」もこのような困難の積み重ねの中で起こる。問題が積み重なり深刻化してからの支援は非常に難しいが、早期に支援することで回復や生活の安定化の見通しは立ちやすくなる。支援コストの低下も期待できる。

 ところが、困難を抱えている子ども・若者やその保護者は、自分に支援が用意されていることすら知らない場合も多い。子ども・若者と支援をつなげる仕事を意識的に行う必要がある。

 ほとんどの子どもは、学校に籍をおいており、学校は最も早く子どもの困難を把握できる場であると言っても過言ではない。なかでも不登校は、精神疾患や発達障害の有無や虐待や学校でのいじめ、学習内容がわからないといった様々な困難を抱える子どもが発する重要なサインの一つである。

学校と外部機関の連携が必要

 しかし、現実の学校には、様々な要因で発生する不登校に対応する力が充分あると言えるのだろうか。多くの教師たちは多忙の中で疲弊しきっている。全国の学校で多発するいじめの発生にも対応できていない背景には、教師の多忙がある。だからこそ学校は地域の社会資源や専門家と連携した取り組みを進めるべきだろう。

 不登校の背景には、虐待、ネグレクト、発達障害、精神障害、いじめ、DV、家族崩壊、そして貧困など多様な背景がある。学校と教員が対応できるものは限られている。

 学校、適応指導教室、スクールソーシャルワーカー(SSWr)などが、不登校児童・生徒、進路未定中卒者、高校中退者などを把握し、早期に「相談・見守り」につなげることができれば、困難の長期化・深刻化を防ぐことが期待できる。

 大阪府では、2004年、「コミュニティソーシャルワーカー(CSWr)」制度を導入し、制度の狭間や複数の困難を抱え、既存の福祉サービスだけでは支援が困難なケースや家庭に対する「見守り・発見・つなぎ」機能と地域のセーフティの体制づくりを担当している。

 コミュニティソーシャルワーカー(CSWr)は、地域で「困っている家庭、子ども・若者」を発見し、支援につなげる活動を行うが専門性を必要とせず、気軽に相談できる存在として地域に根ざした活動を行っている。 

 スクールソーシャルワーカー(SSWr)やコミュニティソーシャルワーカー(CSWr)など、支援を必要とする子どもや若者たちを福祉行政や就労支援団体とつなぐソーシャルワークの専門家と、学校との連携が、早期の支援の着手を可能にする。これにより、長期的に見れば社会的コストを押し下げることが可能となろう。

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