2024年4月19日(金)

安保激変

2012年9月20日

 各省庁の日本部やアジア太平洋局に所属している人に親日派・知日派が多ければ、日本にとっては日々のやり取りはずっとスムーズになる。総理や各省庁閣僚その他の幹部ばかりでなく、国会議員がワシントンを訪れたときにも、面談の約束を取り付けるのも楽だ。何より、種々の案件(安保問題で言えば集団的自衛権、専守防衛の原則や非核三原則など)や各案件(沖縄の米軍基地問題や拉致事件など)の過去の経緯についていちいち細かく説明しなくても分かって貰えると、意思疎通も何かと容易になるのが有難い。しかも、米政府内で日本の立場を代弁し、日米関係の重要性について論陣を張ってくれる。この意味で、親日派・知日派が日本にとって有難い存在であることは間違いない。

米国政治でも「外交は票にならない」

 しかし、親日派・知日派が多く政権入りすることと、そのことが米国の日本政府に対する見方そのものに大きな影響を与えるかどうかは、実ははっきりしない。日本でも「外交は票にならない」と言われ、これを専門にする議員の数が少ないことがしばしば問題になるが、米国政治でも状況は変わらない(ただし、「国防問題・軍に理解がある」ことが大きなプラスになるという点は日本とまったく異なる)。

 そのため、政権の中で大統領の「側近」と言われている人々は内政問題に強い、或いは選挙戦略に長けている人であることが殆どだ。大統領を中心に同心円を描くとすれば、大統領に近い内側の円に位置するのが内政問題や選挙に携わる人々(広報も選挙戦略の重要な一部と考えられる場合が多く、広報戦略の要になる人はスピーチライターも含め、この内側の円に入る場合が多い)で、外交や安全保障問題を専門にするアドバイザーは外側の円に位置することになる。

 1980年代~1990年代の貿易摩擦が既に過去のものとなった日本については、同盟国であるということで安心されており、さらに日本政府から出てくる政策でアメリカの重大な国益が左右されることは殆ど無いという現状も加わって、米政府が外交・安全保障政策を考えるときに考慮される大きな要因にならない。なので政権入りする知日派・親日派は、大統領を中心とした円の外側に位置することが多い。

アーミテージ氏は例外的

 もちろん例外はある。米国の共和党系知日派・親日派のゴッドファーザー的存在のリチャード・アーミテージ氏は、2001~2004年の第1期ブッシュ政権で国務副長官の要職を務めた。同時期に国家安全保障会議(NSC)に籍を置いたマイケル・グリーン博士は、当時の上司だったコンドリーザ・ライス国家安全保障担当大統領補佐官と4年余り共に仕事をする中で強い信頼関係を築き上げ、ライス女史が国務長官として転出した後も自身が政権を去るまではNSCの中で影響力を持ち続けた。


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