2024年4月20日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2012年9月21日

――最近話題になることが多いアノニマスとウィキリークスの違いとは?

塚越氏:アノニマスは「仮面」と「情報の自由を守る」という大義が特徴です(後者に関しては近年その枠をはみ出しつつありますが)。また、アノニマスは一枚岩ではなく、いくつかの派閥で形成されています。アノニマスを理解する上でここ15年ほどのインターネット文化の影響は外せません。それは“嗤(わら)い”や“ネタ“と言った、いわゆる日本で“祭り”と言われるインターネット文化特有の現象です。

 たとえば、2003年に映画『マトリックス リローデッド』の公開前後に黒いサングランスに黒いスーツ、黒いネクタイという同映画のエージェント役のコスプレをした参加者が渋谷に集まり、フラッシュモブ(インターネット等で呼び掛けられた見ず知らずの人たちが公共の場に集まり、意味のわからないことをして、すぐに解散する行為)と言われるものをしました。そういった誰もが匿名で、嗤(わら)いの精神のために行動するといったネット文化が根底にあります。次の段階として、アノニマスの行動が、そういった嗤いのための行動から政治的なものになったとき、正当に世の中に価値を訴える行動となるのか、それともやり過ぎの行動となるのかはこれから見ていかなければなりません。

 アノニマスとウィキリークスの違いとして、リーダー不在があります。アノニマスは仮面を被り匿名であるがゆえに、リーダーはいません。一方、ウィキリークスにはジュリアン・アサンジというリーダーがおり、彼の一言で世の中に価値を訴えるという方法をとっています。リーダーの有無というのは、社会運動なかで注目されるべき現象です。

――リーダー不在であるがゆえの強みはありますか?

塚越氏:首相官邸前の脱原発デモにしても、デモの届出を出さなければいけないので、主催者はいます。また、アノニマスにも実際にはチャットの管理人のようなリーダーっぽい人はいます。しかし、両者とも表には出てこない。リーダーが不在に見えるがために世の中に人々の怒りが集約したという印象を与えます。あるいは、インターネットや携帯電話の技術を使えば、リーダーを介さずにネット上に場所をつくり議論をすることもできます。また、そこで活動の方向性を決めることも可能です。

 こういった手法は、アノニマスだけでなく、オキュパイ・ウォールストリート(「ウォール街を占拠せよ」。アメリカのウォール街に端を発する経済界、政界への抗議活動)などの運動でも使われています。アノニマスはさらに一歩進んでいて、仮面を被ることにより人々の意志というより、抗議対象に対して「どこに行っても我々は見ている」という圧力をかけることができるのです。

――ここまで読んでくれている読者のなかには、ハクティビズムは我々とは関係がないと思ってしまう方もいると思いますが、一般人として、ビジネスパーソンとして気をつけなければならないことはありますか?

塚越氏:ハクティビズムという運動は社会運動として正当に認められる場合もあれば、単なる犯罪としての側面もあります。自分の会社がこのようなものに狙われた場合にはどのように対処するのかを考えなければなりません。


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