シルバー民主主義に泣く若者

2012年10月11日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

中部圏社会経済研究所チームリーダー 

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。12年4月より現職。

 前回記事で紹介し、推計した一般的な世代会計では、現在すでに生まれている世代に関しては、残りの生涯の期間における「負担」と「受益」のみが各世代の世代勘定に計上されていた。したがって、伝統的な世代会計が比較可能なのは、政策変更が各世代の政策変更時点以降の純負担額をどのように変化させるのか、そして推計時点で生まれたばかりの世代(新生児世代)とまだ生まれていない将来世代の文字通りの生涯純負担額の大きさについてだけであった。

 つまり、現在世代に関しては、過去の「負担」と「受益」は考慮されないため、異なる世代間の生涯純負担額の大きさの比較は不可能であった。なぜなら、0歳世代以外の現在世代の受益負担は過去になされた分があり、それが世代勘定に考慮されていないからである。

伝統的な世代会計に対する誤解

 もちろん、現在及び将来の政策決定に際して、各世代が過去分の受益負担をサンクコストとみなすならば、過去分の受益負担の大きさは意思決定にはなんら影響を及ぼさず、現在時点以降の純負担額のみを推計する伝統的な世代会計で十分である。

 ただし、現在世代、特に高齢世代の残存期間における生涯純負担額の多寡だけを見て、ある世代の生涯を通した負担が少なく、他の世代の負担が重過ぎると評価を下すのは適切ではないにもかかわらず、マスメディアを含め一般的には、「高齢世代ほど得をし、若年世代ほど損をする」ことを世代会計が明らかにしているかのような言説が流布される場合も少なからず存在する。

 これまで繰り返し指摘してきた通り、現在世代間の生涯純負担額の比較を行うには、過去分の受益負担額を推計した上で行う必要がある。

 もし、過去及び現在の政策によって、ある特定の世代が他の世代に比べて明らかに有利に扱われていることが明らかになれば、その時はじめて、その世代の純負担額に影響を与える政策変更--負担の増加や受益の削減--を是認することが可能となろう。例えば、現在受益超過の世代がある一方で負担超過の世代がある場合、負担超過世代の負担を削減し受益超過世代の負担を増加させる政策が実施される可能性が高い。

 しかし、受益超過世代の過去分の純負担額に関する情報が一切考慮されていない場合、特に、当該世代は実際には他の世代よりも重い負担を過去になしていたとすれば、そうした負担増加策はアンフェアーとなる。これまで見てきた伝統的な世代会計では現在世代内の負担の公平性に関する判断基準は存在しなかった。

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