2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2012年10月17日

石炭の敵はシェールガス

(図-1) 天然ガスと石炭の価格推移
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 両陣営とも石炭産業振興の立場だが、米国の石炭はシェールガスの本格生産開始以降国内では競争力を急速に失っている。発電所向けの天然ガスと石炭価格の推移を図‐1に示した。発熱量の単位であるBTU当たりの価格だ。シェールガスの生産により発電所向けのガス価格は急速に下落している。

 まだ、ガス価格が石炭より高いが、石炭の場合には個体であるための取り扱いの手間、燃焼後の灰処理費用が必要であり、気体のガスと価格を比較するためには、石炭価格を数倍程度にして考える必要がある。そうすると、ガスが競争力を持つ。

(図-2) 米国の電源別発電量比推移
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 実際に、シェールガスの増産により米国の発電における石炭のシェアも急速に下がり始めた。多くの電力会社がガスの使用を増やしている。図-2が米国の電源別発電実績を示している。

 石炭票が欲しいために両陣営とも石炭支援を打ち出してはいるが、シェールガスの生産増により消費の減少が予想される石炭が置かれている状況を見ると、今後石炭の生産増を図ることは簡単ではなさそうだ。生産性の悪化が続くようであれば、雇用につながる可能性はあるが、コスト増はやがてガスとのさらなる競争激化という大きな問題を引き起こすことになり、いつまでも雇用増が続くことは考えられない。

 どちらの陣営が勝つにせよ、大統領就任後、シェールガスの増産が続く中で相対的な二酸化炭素排出量も多い石炭振興策を打ち出すことは簡単ではないだろう。

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