2024年4月19日(金)

渡辺将人の「アメリカを読む」

2012年10月17日

 こうした強引な乗っ取り方法に、ローカルの共和党は防波堤としての抵抗力がなかった。保守的な地元民が和気あいあいと代表を選出する方法が長年とられてきて、共和党を内部から破壊しようとするような革命的な動きには無菌状態だったからだ。

「ポルシェビキ」は共和党支持者ではない

 ポール派は共和党内では「ロボット」のような画一的行動をとる不気味な集団として「ポールボット」と蔑まれている。また、元ジョンソン郡共和党委員長のB・キートルのように、ボルシェビキになぞらえて「ポルシェビキ」と称する者もいる。ポール派を警戒するキートルは次のように述べる。

 「ポール支持者(ポール・ピープル)」を正しく理解するとこうなる。彼らは共和党支持者(リパブリカン)ではないということだ。ポール派はウイルスだ。彼らと妥協する方法がない。駆除するより他ない。さもなければポール派は共和党を腐らせるか駄目にしてしまう。ポール派はライアン副大統領候補には反対していない。ロムニーに対して怒っているのだ」

 ポール支持者の大半は連邦準備制度が秘密組織に支配されていると信じている陰謀論者だとして中傷する声も共和党内からはよく聞こえる。8月のアイオワ州ジョンソン郡の共和党委員会でも、隠れポール派の委員が「銀行資本が共和党と民主党を支配している。私は辞任して、党派登録をインデペンデントに変える」と突然叫んで、共和党委員会を脱退するという辞任劇もあった。同じようなことが今年に入ってから大なり小なり各州で続いている。

代議員からロムニー支持者を駆逐したアイオワ州

 実際、激戦州の1つであるアイオワ州の代議員は、ポール支持者ばかりで埋め尽くされた。「異常事態」と言ってもよい。ポール派の激戦州での席巻ぶりを伝えたくない全国メディアは報道しないと、地元共和党幹部から筆者へ海を越えて泣き言が入った。半信半疑だった筆者も、タンパ入りして会場の代議員フロアを見て驚いた。旧知のアイオワ州のポール派やリバタリアンばかりだった。彼らは通常ならとても共和党の代議員になれるような思想の持ち主ではない。

 例えば、アイオワ州下院選挙区第2区は3人の代議員枠を持っているが、ポール派が2席を独占した。共和党主流派は、地元共和党有力者のボブ・アンダーソン1人をなんとか代議員に入れるのがやっとだった。他の3つの下院選挙区は、補欠員を含めて全員がポール派の代議員だった。全州単位代議員は、ブランスタッド知事、グラスリー連邦上院議員、それに1、2名のサントラム支持者以外は、すべてポール派で埋められていた。

 アイオワ代議員団の顔ぶれは実に興味深かった。団長のドリュー・アイバーズは宗教保守から保護貿易主義の孤立主義者まで、過激な候補者だけを応援してきた選挙のプロだ。かつてはジョンバーチ協会候補のジョン・シュミッツ、キリスト教連合のパット・ロバートソン、ニクソンのスピーチライターだったパット・ブキャナンなどを支持してきた。


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