2024年4月25日(木)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2012年11月2日

(図表5) 日米大企業の自己資本比率の推移
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 さらに、日本企業の自己資本比率は増加しつづけており、足元では日本の大企業の自己資本比率はアメリカ大企業と肩を並べる水準に達している(図表5)。これは、日本の大企業が、投資資金が潤沢にあることにくわえて、投資リスクにアメリカ企業と同程度に耐えられる財務体力を有するに至っていることを意味している。

 日本経済が低成長を続けており、欧米経済ばかりか中国等の新興国経済までもが減速するという現状では、大胆な投資や事業展開を控えて今後の状況を見極めるのは当然といえる。近年では、リーマンショック、東日本大震災、タイの大洪水、日中関係の緊張などビジネス展開にあたっての大きなリスクが立て続けに生じてもいる。

 しかし、積極的にリスクを取る事業展開や投資を長期間にわたり控えるのでは、世界有数の財務体力を有する意味が薄れかねない。それどころか、利益を活用せずに内部留保として積み上げるばかりでは、もっと利益を従業員の雇用・賃金や配当等株主還元に充てるべきではないかとの疑問すら拡大してしまう。

グローバル目線で他社に勝る事業展開を

 いくら内外の経済リスクが大きく、積極展開は簡単ではないとしても、長期間にわたり人件費などのコストを削減して縮小均衡的に経済環境に耐えるだけでは、企業の役割が問われてしまう。

 そもそも、財政制約が厳しく、民間活力による経済成長が従来になく必要となっている中で、企業部門が委縮するばかりでは、国民の豊かさを増進するどころか維持することも容易ではなくなってしまう。


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