渡辺将人の「アメリカを読む」

2012年11月5日

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渡辺将人 (わたなべ・まさひと)

北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授

1975年生まれ。シカゴ大学大学院修了。米下院議員事務所、H・クリントン上院選本部、テレビ東京報道局「ワールドビジネスサテライト」、政治部記者、コロンビア大学、ジョージワシントン大学客員研究員を経て現職。専門はアメリカ政治。著書に『分裂するアメリカ』『オバマのアメリカ』(ともに幻冬舎新書)、『評伝バラク・オバマ』(集英社)、『見えないアメリカ』(講談社現代新書)、『現代アメリカ選挙の集票過程』(日本評論社)、共著に『オバマ政権のアジア戦略』(ウェッジ)、『オバマ・アメリカ・世界』(NTT出版)など。

 オバマ政権は政権発足時、包括的移民制度改を重要政策の1つにしていた。既に入国している不法移民の合法化を含む目玉政策だ。「壊れた移民システムを継続するわけにはいかない」「(不法移民を)日陰の身から解き放つ」と、選挙中から強調していたオバマ大統領は、2008年大統領選挙では67%のヒスパニック票を得た。今回もヒスパニック票の動向は注目される。

雇用問題と医療保険改革で
足を引っ張られた移民改革

 オバマ大統領に「嘘つきだ」と野次を発した共和党議員を覚えているだろうか。2009年9月、医療保険改革の意義を訴える大統領の両院向け演説中、サウスカロライナ州選出のジョー・ウィルソン下院議員が発した野次が「大統領に失礼だ」として問題化した騒ぎだ。民主党からは非難の嵐で、大統領への不敬として謝罪が要求された。しかし、保守系支持層の間ではウィルソンは一夜にして英雄となった。

 実はこの野次は、大統領が不法移民には医療保険の受益が拡大しないと述べた直後に発されたもので、「大きな政府」批判には違いがないのだが、下敷きに移民問題があった。移民制度改革は医療保険と絡んで、共和党にとって重複した抵抗対象だったのだ。1200万人規模ともされる不法移民への合法地位付与には、あまりに障害が大きかった。

 結果、オバマ政権1期目では、移民制度改革はまったく進まなかった。医療保険改革という最大の優先課題に手間取る中、経済が思ったように回復せず、不法移民合法化で労働者層の雇用不安による反発が懸念されたからだ。2012年の最重要州であるオハイオ州の世論も、必ずしも移民合法化に同情的とは言いがたい。

 オバマ陣営はヒスパニック票を伝統的な移民政策だけではなく、オバマの雇用対策法案の受益者として位置づけ、「経済ポピュリズム」に包み込み直す戦略の修正を迫られた。

ヒスパニック系対策で巻き返しをはかる共和党

 2012年10月2日にCNNで発表された世論調査では、全国レベルではヒスパニック票におけるオバマの優勢を示している。ヒスパニック系の70%が「オバマ支持」と、「ロムニー支持」の26%を圧倒的に引き離している。「どちらも支持しない」が3%、「それ以外」が1%だった。前述したように2008年にオバマはヒスパニック票の67%を獲得、共和党マケイン候補は31%獲得だった。

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