2024年4月25日(木)

渡辺将人の「アメリカを読む」

2012年11月5日

 しかし、2006年には、この共和党支持基盤の動員の伸び悩みや棄権が引き金で、下院で民主党が多数派になり、きわめてリベラルな女性下院議長のペローシ体制が誕生したのは保守派にとってもアイロニーだろう(ハリケーン・カトリーナが別の理由にあったとしても)。二大政党制における内部造反は、相手政党に漁父の利を与える。

 平時では、宗教保守のほかアフリカ系などのマイノリティなど、いくら政治課題に敏感な層であっても、投票に必ず参加するわけではない。投票以外にも、市民活動的なアドボカシーやロビイングで、政治意志を表明するルートが皆無ではないからだ。

ネットによる投票率アップ支援戦略

 それでも、投票が一番の政治参加の礎であることは変わらない。オバマ陣営が口を酸っぱくして、リベラルな支持基盤に叫んでいるのはここだ。直前は無党派層を「説得」する作業と同時にあるいはそれ以上に、「ベース(支持基盤)」に棄権をさせないように動員する作業が大切になる。

 私がニューヨークの選挙陣営にいた12年前との違いは、インターネットやソーシャルメディアなど新技術の発展である。当時はGOTVのオペレーションも労組やコミュニティ・リーダーの組織頼みで、手探りで行っていた。ごく一部の意欲がある活動家やその個人ネットワークへの依存度が高かった。

 2012年には、過去に民主党で投票した人、オバマ陣営にメーリングリストを登録している人宛に、選挙前の週末に洪水のように陣営からメールが送られている。

 メールにはリンクが張られていて、「GOTTAVOTE」というオバマ陣営サイトの州サイトに飛ぶ。50州の選択肢が出てくるが、例えば「オハイオ州」を選ぶと、「期日前投票:11/4 午後1時から5時まで、11/5 午前8時から午後2時まで」という案内と共に「Find your early voting location」の項目に住所や郵便番号を入れると、自宅付近の投票所が出る仕組みだ。

 アメリカで当日の投票率を下げていた事情に、「どこで投票したらいいかわからない」「何時までやっているかわからない」といった問題があった。このシステムで相当程度問題が解消できた。また付近のイベントやボランティアが必要な場所なども表示されるので、「参加」もしやすい。

 ややこしいことに、アメリカでは州ごとに投票の詳細が違う。マシーンも違えば、投票時間も違う。同じ東部時間でもフロリダ州は投票時間が午前7時から午後7時まで。ヴァージニア州は午前6時から午後7時まで。ニューヨーク州は午前6時から午後9時まで。驚くほど違いがある。投票に慣れていない有権者は、テレビ報道に惑わされて「自分のタイムゾーンの州はもう閉め切った」と思い込んで、投票をやめてしまうこともある。だから「まだうちの州は投票できます!」ということを知らせるオペレーションも大切である。


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