ベテラン経済記者の眼

2012年11月8日

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 日本銀行が10月30日の金融政策決定会合で追加の金融緩和を決めた。経済ジャーナリストの一人として関心をもってウオッチしていたが、日銀がどんな政策を繰り出してくるのかについて今回も事前報道が相次いだ。実際の決定は、日銀が基金を通じて市場に供給する資金の量を総額91兆円とするほか、企業や個人がお金を借りやすくするため無制限の融資制度を設けることなどを柱とする内容だった。政府と日銀の共同文書も初めて発表された。

 日銀が金融政策を変更する際には報道が過熱する。昔は公定歩合の上げ下げ、今は金融緩和の内容が焦点だ。かつて「公定歩合と解散はウソをついてもいい」と政治家がよく口にしたが、日銀の金融政策は、決定内容が世界経済や市場に大きく影響するため、情報管理も厳しい。私は公定歩合の上げ下げの取材経験はないが、日銀の金融政策の決定にかかわる取材にはかつて直接的、間接的にかかわった経験があり、ご多分に漏れず報道合戦にも参加した。

取材を受け付けない「ブラックアウト」期間

 世界経済の状況が悪化しつつある局面で、今回は日銀の対応が一段と注目された。国内外の状況を考えれば「日銀は何かをやることはおそらく間違いない。問題はその規模や中身だ」という共通認識が広がり、そうした条件下での取材競争となった。日銀は情報管理を徹底するため、金融政策決定会合の一週間前から取材を受け付けない「ブラックアウト」という期間を設けている。まったくもって日銀の都合なのだが、日銀執行部や審議委員などは「ブラックアウト」を理由に面会なども拒み、取材がしにくい中で経済ジャーナリストは事前報道でしのぎを削る。

 今回、その代表的なものは産経新聞が10月23日に報道した「20兆円追加緩和要求 政府、日銀に景気刺激圧力」という朝刊一面の報道だ。これは景気浮揚を目的に政府が日銀に国際買い入れのための基金を20兆円増額する追加緩和を求めている」という内容だが、事実上、日銀が20兆円程度の緩和を実施することを予測した内容だ。

 この記事は一面に大きく掲載されたこともあり、他のメディアの追随報道も誘発した。読売新聞は10月24日の朝刊一面で「日銀追加緩和へ調整」と報じ、具体的な数字の断定はないものの基金を10~20兆円程度買い増す方向を示した。経済専門紙の日本経済新聞は翌25日の夕刊一面で遅ればせながら「日銀追加緩和へ 基金増額10兆円軸」と具体的に絞り込んで報じた。

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