渡辺将人の「アメリカを読む」

2012年11月11日

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渡辺将人 (わたなべ・まさひと)

北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授

1975年生まれ。シカゴ大学大学院修了。米下院議員事務所、H・クリントン上院選本部、テレビ東京報道局「ワールドビジネスサテライト」、政治部記者、コロンビア大学、ジョージワシントン大学客員研究員を経て現職。専門はアメリカ政治。著書に『分裂するアメリカ』『オバマのアメリカ』(ともに幻冬舎新書)、『評伝バラク・オバマ』(集英社)、『見えないアメリカ』(講談社現代新書)、『現代アメリカ選挙の集票過程』(日本評論社)、共著に『オバマ政権のアジア戦略』(ウェッジ)、『オバマ・アメリカ・世界』(NTT出版)など。

 2012年選挙は、オバマ大統領が再選でホワイトハウスの主は変わらず、連邦上院は民主党が多数派、連邦下院は共和党が多数派といずれも「現状維持」となった。共和党と民主党の専門家の読みは直前まで乖離していた。「2008年の歴史的な選挙をどう扱うか」という予測の「モデル」をめぐる論争、そしてハリケーン・サンディの影響をめぐる解釈の違いなどを手がかりにギャップを読む。

有権者の投票行動をめぐる「モデル」論争

 選挙前にも開示可能な情報と、選挙結果が出るまで引用も開示もしない約束のものを含め、筆者が民主・共和両党の関係者に聞いた予測はズレを示していた。接戦選挙の予測は党派的な影響を排除できないことは言うまでもない。各陣営の当事者が「スピン」をかけてくるのは当然のこと、世論調査会社、メディア各社、政党関係者(連邦議会スタッフ、過去の大統領陣営の選対幹部、政党の全国委員会スタッフ)、ジャーナリスト、政治学者もときには党派色と無縁ではない。

 ロムニーに楽観的な見立ては、やはり共和党関係者から聞こえてきた。選挙前日、ある共和党世論調査専門家の「メモランダム」が届いた。

 「明日の夜、誰かが惨めな姿を晒す。それは世論調査に2008年モデルを使うことにこだわってばかりいる専門家かもしれない。あるいは、それは我々のように2008年モデルを非現実的でオバマの優位性の誇張だと批判してきた者達かもしれない。火曜日になれば、我々は2つののうちどちらか1つが真実だったと知る。オバマは2008年と同様の投票率を確保でき、2008年モデルを用いた世論調査やそれに類似した調査が正しかったとなるのか。あるいは、2006年、2008年、2010年の3つの選挙が、ノーマルな選挙民の状態をかきけしていたのか」

 「2008年モデルが正しければ、オバマは僅差で再選される。270から280の選挙人で。もし、2004年の動員率に留まる"ノーマル"に戻るならば、ロムニーは300以上の選挙人で当選する」

 このメモランダムの筆者は共和党全国委員会で世論調査専門家を務めたことがある、共和党系のクリス・ウィルソンのものだ。共和党関係者に送られ、内容の一部が記事化もされた。ウィルソンは「コロラドはロムニー勝利、アイオワはオバマ勝利、オハイオはロムニー勝利、ネバダもロムニー勝利」で、ロムニーが大統領になると予測していた。

 同様のモデル理解で予測した専門家の見立ては外れ、共和党側だけにソースを持っていた関係者は、オバマの支持層動員は2008年と同じようには再びならないと考え、共和党の予測外しに一部巻き込まれた。

 1960年代から共和党政治に深く関与してきたワシントンのベテラン専門家は、選挙前日、次のように筆者に述べていた。

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