2024年4月20日(土)

渡辺将人の「アメリカを読む」

2012年11月11日

「2008年の再来があるか/ないか」という
二元論モデル

 これらの予想がほとんど外れたのは言うまでもない。いわゆる激戦州でロムニーはノースカロライナ州しか取れなかった(9日時点で開票作業が続くフロリダ州を除く)。

 選挙後、ディック・モリスは、共和党関係者すらも「あまりに潔い」と唸るほど率直に自らの過ちを認め、「なぜ私は間違っていたか」という「敗北宣言」を出した(7日に購読者にメール送信した「ディック・モリス・レポート」にて)。モリスはロムニーの地滑り的勝利を予測していたからだ。モリスは言う。

 「私が予想を誤った最大の理由は、2008年に起きたような黒人、ラティーノ、若者の投票は2012年には起こらず、"ノーマル"な水準に戻ると信じきっていたことだった。私の予想のようにはならなかった。マイノリティと若者の極めて高いレベルの投票は今回も起きた。この現象はアメリカの政治を永続的に再構築するものとなっている」

 しかし、「2008年の再来があるか/ないか」の二元論的なモデルの設定自体が誤りで、これこそが共和党の敗因だと内部批判する共和党系戦略家の声もある。

 「オバマは再選、下院は共和党、上院は民主党」と冷静な予測をしていた共和党戦略家もいた。先のウィルソンのメモランダムに大統領選挙分析では同意できないとして、彼は選挙前に次のように筆者に述べていた。

 「今回アメリカの専門家は2つの違うモデルの分析に分派している。ロムニーが2008年モデルに縛られ、オバマ陣営は実はヒスパニック系と女性票の投票率上昇を前提としたモデルを用いている。オバマ陣営は(2008年以上の)新規の動員開拓もしており、かつてない規模のGOTVと地上戦を仕掛けている。だから、オバマが勝つだろう。2008年にこだわるのは馬鹿げている。しかし、この2008年モデル自体が共和党の幻想なのだ。ロムニー陣営の連中は、自分たちで作った幻想に怯えて、その粉ジュース(クールエイド)を自分で飲んでしまっている」

 なるほど、デイビッド・アクセルロッドにきわめて近いあるオバマ陣営の幹部は、共和党が予備選で消耗している春先の段階で、オバマ陣営は「プロジェクト・ボート」というアウトリーチの部署を設け、新規票の開拓を視野に入れた、巨大な動員戦略を展開していることを力説していた。

 高齢者と退役軍人を「説得対象」にしつつ、「動員対象」として、ヒスパニック系、女性、若年層、アフリカ系、同性愛者に絞り、カトリック票でカトリック教会・尼僧団体と連携を進めていた。


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