2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年11月21日

 リーバーマン上院議員の提案が通ることを望む、と述べています。

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 この社説は、重要インフラへのサイバー攻撃の脅威について警鐘を鳴らし続けているリーバーマン上院議員の動きを支持するものです。オバマ大統領も、サイバー攻撃の危険について、米WSJ紙に論説を寄せたことがありますが、こういう意見は傾聴に値します。しかし、米国内では、脅威を大げさに言いたてていると言う意見もあります。

 リーバーマンの当初の法案は、電力、水道、ガス、金融などの重要インフラ企業に、政府と協力して最低限のサイバー攻撃への防御措置をとることを要求するものでした。しかし、業界が負担増を嫌い反対にまわり、また、通常はリーバーマンに協力的なマッケイン上院議員が業界に同調するなどして、法案は上手く通りませんでした。防御措置を義務にはしないとの修正をしましたが、それでも議会は通りませんでした。今は、法案をさらにどう修正するか、その一部を行政命令で実施できないかが問題になっています。

 サイバー攻撃があった場合の被害の深刻さについての評価が人によって異なることが、この議論が収斂しない主な理由です。グルジアやエストニアへのロシアによる攻撃も、それ程大きな被害を出したわけではなく、被害想定は予測にすぎないので、色々な意見が出ます。

 上記のワシントン・ポスト紙の社説のもう一つの論点は、透明性を持ってサイバー戦争のことを討議すべきであるということです。しかしこれは、サイバー紛争がそこまで来ているのであれば、防御や攻撃の手段をオープンに議論することが良いとはとても言えないでしょう。悪意の攻撃者に手の内をさらけ出すことになるからです。

 STUXNETについて、米の関与を認める漏洩がなされましたが、これは国家安全保障上、あってはならない漏洩です。そう考えますと、透明性を持ってサイバー戦争に関することを進めるべきという意見には、なかなか賛成できません。

[特集] サイバー戦争

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