2024年4月25日(木)

安保激変

2012年11月15日

日本を見る目
「一度決まったことが覆らない政権を相手にしたい」

 このような状況で、2期目を迎えるオバマ政権は日本とはどのように向き合おうとするのだろうか。確実にいえるのは、「せめて、既に政府間で決めたことは粛々と実行してほしい」と米国が希望しているということだ。

 2009年に民主党政権が発足して以来の3年間は、「政治主導」の名の下で、日米政府間での決定事項が事実上反古にされたり、日本政府の方針として一度は決定しかかったものが土壇場でひっくり返ることが続いてきた。普天間飛行場移設問題や武器輸出三原則見直しを巡る民主党政権内での迷走はその一例に過ぎない。環太平洋連携協定(TPP)も、野田総理が昨年11月に「加盟を見据えて交渉に参加したい」という意思表明をしたにも拘わらず、日本政府として交渉参加に向けた具体的な道筋は描けないままだ。「民主党政権でも自民党政権でもいい。一度決まったことが覆らない政権を相手にしたい」というのが米政府関係者の切実な思いだろう。

 また、尖閣諸島問題を巡って日中関係が緊張を続ける中「日本は長期的に中国とどのような関係を築いていきたいと思っているのかが見えてこない」という声もよく聞かれる。「尖閣諸島に対する武力攻撃は安保条約の5条事態(日本防衛)に相当する」という立場を取っている米国にとって、中国が「5警」として知られる、人民解放海軍ではない海警、魚政などの諸機関を用いて強硬な手段に出てきたときに日本がどのように対応するのかは、重要な問題だからだ。

 さらに、個別の政策問題を超えて「与党が民主党主導でも自民党主導でもいい。安定した政権ができればいい」というのが、米政府で日米関係に関与している人達の共通の思いであるようだ。たとえば、外務・防衛当局の間では1997年に一度見直しが行われている「日米防衛協力の指針」を再度見直す方向で、事前協議が始まったが、「協議に一定の進展があれば、早く2プラス2を開いて、それを公の同盟としての文書に残したい。しかし、短期政権が続く今の状況では、いつ開催するのかを判断するのが非常に難しい」という雰囲気が強い。

 日本では、野田総理が「TPP解散」をするかどうかがささやかれている。石原慎太郎元都知事をはじめとする、非自民、非民主の「第三の勢力」を巡る動きも目まぐるしい。この一連の動きの結果、米国が期待するような「安定した政権」が来年、日本に生まれる可能性はどれくらいあるだろうか。


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