あの挫折の先に

2012年11月20日

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夏目幸明 (なつめ・ゆきあき)

ジャーナリスト

1972年、愛知県生まれ。愛知県立豊橋工業高校から早稲田大学へ進学、卒業後、広告代理店に入社し、その後、雑誌記者へ。小学館『DIME』に『ヒット商品開発秘話 UN・DON・COM.』を、講談社『週刊現代』には、マネジメントの現場を描く『社長の風景』を連載。ほか、明治学院大学講師をつとめ就活生の支援を行う。『資格の学校TAC』では、就活生と一緒にエントリーシートを書き、面接練習を行う講座を持つ。
執筆記事:「社長の風景」(現代ビジネス)、「火力発電所奮闘記」(『VOICE』)、「ビジネスの筋トレ」(『フレッシャーズ』)、「就職活動セミナー」(『資格の学校TAC』)

自分で調べたデータで、
腹をくくり、周囲を動かせ

 消費者は絶対に「凍った泡で覆ったビールが飲みたい」と教えてはくれない。そして、マーケティングデータを見ても、例えば味、価格、飲む頻度など、マーケティング担当者であれば知っていて当然のデータしかない。だから彼女は、徹底的に現場を見て、仮説を立てた、というわけだ。

 「当然、これ以外の売り方もいろいろありました。しかし最後は『これで行くんだ!』と自分自身の中で、腹をくくらなければならない時が来るんです。その熱意を持って信じるところまで行かなければ、周囲の人は動いて下さいません。そして、腹をくくるためには、やはり、自分なりの視点で市場を見なければならないのです」

後輩に「花形部署であるマーケティングに行くにはどうしたらいいか?」と相談を受けるという田代氏。そんな時、彼女は「今の部署で、自分ができることを、最大限の力を持って取り組んでみて」と話すそう。希望部署への異動や、スキルアップを望むなら、これ以上できることがないと思えるまでやり尽くしてから考えても遅くない。

 思えば『フローズン<生>』意外にも、担当者の個人的なマーケティングで生まれたヒット商品は数多くある。例えばPLUSのはさみ『フィットカットカーブ』だ。日経が発表するヒット商品にも選ばれたこのはさみの特長は、ペットボトルやひもやビニールや段ボールなど、紙以外も切りやすいこと。担当者は友人の家を訪ねた時、必ず「はさみ見せて」と言い、コンビニでも「新しいはさみを差し上げます」と古いはさみを引き取り、使用シーンを調べた。その結果「今、はさみは紙以外を切ることの方が多いのでは?」と思い至っている。営業でも同じだ。ヤナセのトップセールスマンは、独学で、簡単な修理ならできる資格をとった。高級車のユーザーは忙しい人が多く、車を引き取り、代車を渡し、再び納品し……という時間がとれない人も多い。そこで彼は、ちょっとした故障や部品交換程度なら自分がその場で直せます、という特技を持つことで顧客に可愛がってもらった、というわけだ。

 右も左もわからず、四苦八苦している時は、自分の足でデータを集めて、独自の視点を探せ──田代の経験は、若い人が会社で大きなことを成し遂げるヒントを与えてくれているはずだ。

POINT
若手時代、会議に出席し、上司や先輩から「何も発言しないならここにいる意味はないよ」などと言われた経験は誰にでもあるはず。一見、残酷である。いきなり仕事ができる人などいるわけないではないか。しかし、周囲は思いがけない意見を期待している。それは例えば「若者のビール離れが問題です」といった、誰でも言えることではない。「若い人は時間をかけてビールを飲んでいるようですよ」といった、今までの誰もが持ち得なかった仮説が聞きたいのだ。

(※文中敬称略)

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