2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2012年11月20日

 検討会にしても、政治の影響が色濃くにじんでいる。関係者が指摘するのが、前国交副大臣の吉田おさむ氏の暗躍である。

 7月初旬に開始し、9月上旬には結論を出す日程を突然変更。「羽田の発着枠は国民の貴重な財産。政務3役であらかじめ方向性を検討する」とスケジュールを先送りした。

 国交省関係者は、「JALの再上場に反対する自民党の動きを意識したからだ。再上場を間近に控えた時期に発着枠の議論が進めば、再上場の行方に影響を与えかねないため、できるだけ議論を先延ばししたいということだ」と解説する。

 「JAL支援の公平性を議論する場ではない」とする意見が少なくなかったのは、与野党の駆け引きにうんざりした面があるようだ。

 11月にも決まるJAL、ANAの配分は最終的にどうなるのか。

 国交省は8月に示したJAL再生への対応指針に「健全な競争環境の確保」を盛り込んだ。今回の配分をその一歩と位置付けている模様だ。

 大手2社の差をつけない従来の配分を改め、ANAに一定程度、積み増す方向で検討しているのは間違いない。ただし、民主・自民の代理戦争の色彩が強まる中で、その差を大きくつけすぎると政治リスクを伴う。官僚が得意とする微妙なサジ加減で、配分数を決めるとみられる。

 国交省が描くシナリオには、2つのポイントがある。1つは配分基準に「破綻事業者」という観点を入れることだ。ANAが主張する「配分資格なし」との極論は排除しつつ、更生手続きの期間や支援の規模などを勘案する。例えば、路線維持を自力で達成したのか、更生計画によって実現できたかを考慮するというものだ。

 もう1つは地方路線への貢献度である。地方―地方はANAが49路線でJALの33路線を上回る。JALが優勢な離島路線を除くところがミソだ。羽田―地方では1日3便以下の低需要路線はANAが強い。こうした路線を維持する努力を重視することで、結果的にANAにポイントを稼がせる可能性が高い。

 もっとも今回、配分基準を大きく見直しても、結局は国交省の裁量権が温存され、発着枠の配分が透明で客観的な方法に変わるわけではない。むしろ、JAL破綻の遠因となった永田町と霞が関の干渉が繰り返されただけとみることもできる。

 狭い「航空ムラ」の既得権争いにかまけているようでは、格安航空会社(LCC)の台頭で激変している国際競争に生き残ることもできないだろう。

◆WEDGE2012年12月号より

 

 

 

 

 

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