2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年12月5日

 金正恩は4月6日の労働党中央委責任幹部らとの談話において「我々は人民生活向上と経済強国建設で決定的転換を起こすべきである」とし、「人民の食の問題、食糧問題を円満に解決すべきである」と述べています。その後も食糧問題解決を強盛国家建設の突破口とすべしといった論調が労働新聞社説に見られることからも、農業改革が真剣に検討されてきたことは確かでしょう。

 問題は、Revere氏も指摘するように、その様な改革が実現可能か否かです。食糧が絶対的に不足し、軍部にも食糧が行きわたらない状況で、農民に生産量の3割を保有して良いなどと言ってみたところで、農民は、当局が生産量を過大に見積もって収奪するだけであると見て信用しないでしょう。農民は、僅かに認められている個人農地の耕作や市場での取引に力を入れる方が得策と考えるはずです。

 非現実的な改革案を強制すれば、農民を更なる苦境に追い込むことにもなります。国際社会との和解を図り、食糧援助を受けて食糧事情をある程度改善し、肥料、農薬も確保した上で、農業改革に臨むことが王道であると思われます。

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