ベテラン経済記者の眼

2012年11月30日

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 衆議院の解散・総選挙の運びとなり、12月4日の公示が迫っている。私もメディアの世界に長くいるが、衆院解散が「期日指定」で行われたのは例がない。当初は、自分も含めていずれ選挙はあるだろうが、年内でも師走の遅い時期、あるいは年明けの通常国会冒頭といった見方をしていた人が多かっただけに、急な展開に正直びっくりした。それにしてもそれまでさんざん「うそつき」などと批判されていた野田首相の放った一撃は大きかった。テレビで一瞬たじろいだ自民党の安倍総裁の顔が印象に残っている向きも多かろう。

 という次第で、すでに世の中は選挙一色である。メディアでは選挙といえば東京の政治部と地方の支局・放送局が中心となるイベントに見られがちだが、実際には経済ジャーナリストの出番も多い。なぜなら政治と経済は密接に関連しており、経済問題が選挙の大きな争点になるからだ。

政治家のターゲットになりやすい日銀

 今回の衆院選は最近の流行り言葉でいえば「つっこみどころ満載」の選挙だ。

 政策論争は経済マターのオンパレード。消費税の引き上げ、原発・エネルギー政策、金融政策、農業政策、TPP(環太平洋経済連携協定)への参加問題など。それぞれについて候補者の考え方が厳しく問われることになる。中でも解散前後から盛り上がっているのは金融政策だ。自民党の安倍総裁が「日本銀行にどんどん金融緩和をやらせてデフレを脱却する」と講演でしゃべったとたん、円相場や株式市場が一気に反応し、円安・株高に振れた。

 昔から政治家が日本銀行を敵役にして悪口を言ったり、批判したりするのはよくあることで、経済ジャーナリストの間では常識だ。「予算を握る財務省はおいそれと敵に回せないが、日銀は簡単に批判でき、批判することで経済通に見える」、という解説が長年、永田町周辺ではささやかれていた。真偽はともかく、与野党問わず日銀が政治家ターゲットになりやすいのは確かだ。

敏感に反応したメディア

 ある意味で安倍総裁はその点をうまく突いたともいえる。衆院で事実上の選挙戦に突入した中で、自民党のトップが日銀や金融政策に言及すれば目立つうえ、メディアも注目せざるをえない。首相経験があり、メディアを知り尽くした安倍氏の巧みな作戦ともいえる。

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