日本再生の国際交渉術

2012年12月12日

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渡邊頼純 (わたなべ・よりずみ)

慶應義塾大学総合政策学部教授

上智大学文学部哲学科卒業、同大学院国際関係論専攻博士課程修了、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部、GATT事務局、外務省経済局参事官などを経て現職。

 不妊治療の分野や特殊な薬の投与を必要とするような難病の治療では特に混合診療の解禁を求める声があるのも事実だ。しかし、それがTPPで交渉されるということはアメリカの交渉責任者によって明確に否定されていることを知っておくべきである。

TPP交渉参加は年内に表明を

 12月16日の深夜には衆院選の結果が概ね明らかになろう。この原稿を書いている時点(12月9日)では自民党の優勢が伝えられている。公明党もTPPには反対と言っているので、自公連立となればTPP反対が主流となる可能性が高い。今の日本のEPAはほぼ全て前の自公連立政権が進めてきたものであるから、TPPの意味については理解も進んでいると考えるが、地方で民主党を押しのけて当選した自民党議員は農業団体から支援されて当選した農水族議員である可能性が高い。

 そうであれば、安倍「首相」も簡単にはTPPに踏み切れない。しかも半年後には半数改選の参議院選挙が控えている。農業団体は衆議院候補だけではなく、既に参議院議員のところにもTPPの「踏み絵」をもって回っているとの噂を聞いている。そうであれば、安倍「首相」としてはなお一層TPPで大胆な動きをとりにくい。衆院選挙後TPPに舵を切ったとなれば次の参院選挙で苦戦し、また国会の「ねじれ」を招く恐れがあるからだ。

 安倍「政権」にとってもう一つの難題は自らの政権公約に言う「聖域なき関税撤廃」はダメという考え方である。日本の参加についてまだ結論を出していない三カ国、つまりアメリカ、豪州、ニュージーランドはこの「聖域なき」というのを認めるだろうか。

 アメリカの砂糖や一部乳製品が示すように、これらの国々にも実は「聖域」はある。しかし、交渉の最初から「聖域」を主張する国はない。「聖域」は交渉の結果としてあとから付いてくるものである。つまり、「あなたの国からのオファーが十分ではないので、我が方としてはこの分野のオファーを取り下げます」といったような言い回しでオファーの撤回をし、ある意味で「聖域」と「聖域」のトレードオフを行うのである。

 まさに「聖域」は神のみぞ知るである。人事を尽くして天命を待てば自ずと「聖域」は与えられる。まずは交渉のテーブルに就くべきである。そうしないと何も始まらない。席に就いてこう言うのである。「日本は交渉のテーブルに全てを載せます。その全てがオファーされるかどうかは皆さんが日本に対して何をオファーして下さるかにかかっています」と。

 「総理、ご決断を!」

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