2024年4月20日(土)

こうして雑誌はつくられる

2012年12月17日

 「実は世界を見渡すと、テクノロジーが進歩すればするほど人間がやる仕事は少なくなっていっているのが現状です。また、仕事の質が大きく変化している。ならば、人とは違う何か新しいことを生み出したり、テクノロジーの進歩により台頭してきたロボットではできない人間の強みを生かしたりできる仕事で生き残っていかなければならない。そういう意図がありました」。

海外メディアにおける
読者と作り手の間にある暗黙の前提

 世界1500のメディアから記事を厳選し、特集としてパッケージングするのは相当大変な作業のようにも感じる。「日本のローカルな興味、最近だと、たとえば総選挙やそれにまつわる個々の政策を扱いたいと思っても、それを弊誌で表現することは難しい。ですから、そうしたローカルな興味をグローバルな視点で捉え直す作業をしなければならないのです。そうした作業を通して、現代人の興味や不安、好奇心の核を見つけられればと常々考えています」。

 「また、海外メディアの記事を扱う上で特に難しいのは、読者と作り手の間にある暗黙の前提をいかに日本の読者にわかりやすく伝えるかですね。たとえば、スペインの新聞の記事には、スペイン人なら誰もが共有している前提があります。それをそのまま日本語に訳し、日本人が読んでもわからないことがある。逆に、日本の新聞をアメリカ人に読ませても理解できない。ですから、弊誌では日本語訳を掲載する際には、記事のそばに理解を手助けするようなコラムをつけたり、タイトルを親切にしたりと工夫しています」。

SNSやブログの活用も活発

 今後どんな特集が組まれるのか楽しみであるが、「大きな方向性としては日本人が関心のあることを表現出来ればと考えています。具体的には、インターネットの発達により、民主主義のあり方が変わろうとしている。それでは未来の民主主義はどうなるのか、といった特集を組みたいですね。また、弊誌の読者の関心が高いイノベーションの企画も考えています。アメリカの西海岸を中心としたIT企業は勢いがありますが、一方の日本企業は元気がない。このイノベーションの差はどうしてなのか、どうすれば発想力を高められるかという特集も組んでみたいです」(冨倉氏)。

 世界各国の記事が日本語で読めるクーリエ・ジャポンは著者のまわりでも人気のある雑誌のひとつだ。人気の要因について冨倉氏は「まだまだ7万部発行と胸を張れるような部数ではありません。ようやく7年という時間を掛け、他誌とは違う、オンリーワンな雑誌であることが浸透してきたのではないでしょうか」と。


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