あの挫折の先に

2012年12月19日

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夏目幸明 (なつめ・ゆきあき)

ジャーナリスト

1972年、愛知県生まれ。愛知県立豊橋工業高校から早稲田大学へ進学、卒業後、広告代理店に入社し、その後、雑誌記者へ。小学館『DIME』に『ヒット商品開発秘話 UN・DON・COM.』を、講談社『週刊現代』には、マネジメントの現場を描く『社長の風景』を連載。ほか、明治学院大学講師をつとめ就活生の支援を行う。『資格の学校TAC』では、就活生と一緒にエントリーシートを書き、面接練習を行う講座を持つ。
執筆記事:「社長の風景」(現代ビジネス)、「火力発電所奮闘記」(『VOICE』)、「ビジネスの筋トレ」(『フレッシャーズ』)、「就職活動セミナー」(『資格の学校TAC』)

相手の事情を知り尽くしているからこそ
「提案型営業」が可能になる

右が『プレミアムアルコールフリー』。麦芽100%麦汁を使った高級感がある味わい。左は『プレミアムアルコールフリー ブラック』。「アルコール0.00%」缶の「ブラック」は世界初。

 その後、彼は営業として成長し、いわば“必死で商品を売ろうとしない営業”になった。これだけ書くと語弊もあるが、彼のコメントを聞いてほしい。『プレミアムアルコールフリー』を、いかに飲食店さんに勧めたかを聞くと、彼はこう話した。

 「私たちは自社の商品を売るために存在していますが、そこに、お客様や酒販店の方たちが商品を買って下さる理由はありません。まずは“商品を売る”という自分の事情を脇に置き、相手のニーズを探ったのです。

 例えば、イタリア料理店で、多く飲まれている飲料ってなんだと思いますか? 実はワインと同じぐらい“水”が多く飲まれているんです。おいしい水を出すこだわりの店では、ミネラルウォーターを仕入れ、無料でお客様にご提供されています。しかし、水を飲んでいるお客様はお酒が嫌いかというと、そうでもないのです。酔ってはいけないなど、様々な理由でアルコールを控えられているだけの方も多いんです」

 すると、仮説が成り立つ。メニューにノンアルコールビールを加えれば、水の代わりに飲んでくれるお客様も多いのではないか。飲食店も少しでも売り上げ増につながる。まさに、売る側の理屈でなく、商談相手の立場で考えた理屈だ。

 「そして、お店の方に、この仮説が本当かをお伺いするのです。すると多くの店の方たちと『ニーズはあるはず』という共通認識が生まれました。ここでようやく『プレミアムアルコールフリー』をご紹介させていただき、一緒に売り方を考えていったのです」

 他社の事情を知ると「提案型営業」もできるようになる。例えば、彼は炭酸が効いたキューバのお酒『バカルディ モヒート』も多くの店に置いてもらっている。これは“お店も酒販店も在庫を増やしたくないが、メニューの幅は拡げたい”というニーズを知った上でアプローチした結果だ。

 「サワーやハイボールが人気になっているように、今、炭酸のお酒は人気があります。しかし、お店は在庫を増やしたくない。ならば『モヒート』はいかがでしょう、というご提案です。『モヒート』はレモンやグレープフルーツとブレンドしてもおいしいので、在庫は『モヒート』だけでも、お客様には何種類もの商品をご提供できるようになります」

 「提案型営業」とはただやみくもに提案することでなく、相手の話を聞いて状況を知り、その上で提案するものだったのだ。

POINT
相手の話を引き出す、そのコツもご紹介したい。以前、リクルートのトップ営業マンに話を聞いた時、彼は「沈黙が何よりのコツ」と言っていた。顧客と話していると、沈黙が怖い。しかし、沈黙が気まずいのは顧客も同じで、黙っていると「実は今、こんな状況がありましてね」などと、言いたいことを話してくれる、というのだ。早川もまた、相手が何か話したい時は、じっと黙って聞くという。

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