あの挫折の先に

2012年12月21日

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夏目幸明 (なつめ・ゆきあき)

ジャーナリスト

1972年、愛知県生まれ。愛知県立豊橋工業高校から早稲田大学へ進学、卒業後、広告代理店に入社し、その後、雑誌記者へ。小学館『DIME』に『ヒット商品開発秘話 UN・DON・COM.』を、講談社『週刊現代』には、マネジメントの現場を描く『社長の風景』を連載。ほか、明治学院大学講師をつとめ就活生の支援を行う。『資格の学校TAC』では、就活生と一緒にエントリーシートを書き、面接練習を行う講座を持つ。
執筆記事:「社長の風景」(現代ビジネス)、「火力発電所奮闘記」(『VOICE』)、「ビジネスの筋トレ」(『フレッシャーズ』)、「就職活動セミナー」(『資格の学校TAC』)

「へこまず試す」が
遠回りに見え、実は成功への近道

 入社2年目、池田は突然、異動を言い渡された。行く先は茨城県。業務は学校に教材などを販売する営業。前任者は事情あって引き継ぎをする間もなくいなくなっていた。彼はまったく土地勘もない、それどころか教育関係者に一切、コネクションがない状態で水戸へと向かうことになった。

池田氏は「水戸のホテルで読みふけったビジネス書から学んだことが、今になって役立っている」とも話す。

 「車に教材を詰め込み、どこへ行ったらいいかわからなかったので、カーナビに『水戸駅』と入れて出発したことを覚えています。当然、学校を訪ねても話をして下さる先生はいません」

 けんもほろろに「話はいいから見本を置いていけ」と言われたこともあった。誰とも話せず、ホテルに帰り、一人悲しく本を読んでいた時期もあった。当然、教材はまったく売れない。

 そんな絶望的な状況を、彼はいかに脱したのか。ポイントは、人の助けを得ること、あとは、人を助けることだったという。

 「会社の編集部の人に、茨城県内で誰か知っている先生がいないかを聞いて、ご紹介いただいたんです。そして、お会いした先生方に、自分はどうしたらよいでしょうか? と素直に聞きました」

 職業柄、親切にアドバイスしてくれる人も多かった。その後、様々な先生方と対話を重ねるうち、池田は重要なヒントを耳にした。

知性とは「法則を知ること」

 「ある進学校で“ほかの学校はどうしてる?”と質問されたことがあったんです。やはり熱心な先生は、例えば他県の優秀な進学校ではどんな指導をし、どんな教材を使っているのか気になるようなんです」

 これがわかったことで道が開けた。池田は先生たちに「他県の進学校の情報を持ってきました」と伝えることで、次第に話を聞いてもらえるようになり、販路を拡大していったのだ。

 知性とは「法則を知ること」である。まず、自分の体験を元に仮説を立てるのだ。例えば「勉強は、興味がないことを押しつけられると嫌いになる」「熱心な先生は、他県の進学校の情報を知りたがっている」といったもの。次に、これが本当か検証し、実際に望み通りの効果があれば、それは「自分だけが知っている仕事の法則」になるのだ。

POINT
最近ビジネス誌などでよく『PDCAサイクル』という言葉を耳にする。プラン(PLAN)、ドゥ(Do)、チェック(Check)、アクト(Act)の頭文字をとったものだ。そして、これを何度も繰り返すことが成功への道と言われる。最初にプランを立てる。この時点では、従来のやり方や仮説を元にしていて構わない。次に実行する。その途中で何度もチェックを加え、改善に向けてのアクションを起こす。興味深いのは「プランを立て」「実行する」だけでなく、当初から「チェック」と「改善」が必要とされていることだ。これは最初から上手くいくことなど何もない、という事実を示しているのではないか。

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