「地域で生きる」ってどういうこと?
若者家族がUターンする秋津地区


岸 裕司 (きし・ゆうじ)  秋津コミュニティ顧問

1952年東京生まれ。広告・デザイン会社の(株)パンゲア代表取締役、習志野市立秋津小学校PTA会長時に秋津コミュニティ創設、会長を経て現在顧問兼秋津小学校コミュニティルーム運営委員会顧問。文部科学省委嘱コミュニティ・スクール推進員、学校と地域の融合教育研究会副会長、埼玉大学・日本大学非常勤講師、ほか。著書に『「地域暮らし」宣言』『学校を基地にお父さんのまちづくり』(ともに太郎次郎社エディタス)、『学校開放でまち育て』(学芸出版社)など。

「子縁」でつながる秋津地域のお父さん 

東日本大震災以降、「地域の絆」の大切さを再認識したという声をよく聞くが、「地域で生きていく」とは果たして一体どういうことなのだろう。特に、ビジネスマン、若いお父さんたちが「地域で生きる」ことの意味について、「子縁(こえん)」を活かした先進モデルと評価される「秋津」地区の実践をレポートしながら、考えていきたい。

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「お、ひがた、きたか!」「しまじいとコンビニいくか!」

 「しまじい」の愛称で親しまれる75歳の嶋村清一おじいちゃんが、お父さんとザリガニ釣り遊びにやってきた4歳のひがたくんに笑顔で呼びかけました。

子縁でつながったコンビニおじさん

「しまじい」の愛称で親しまれる嶋村清一さんと戯れるひがたくんとお父さん。習志野市立秋津小学校のコミュニティガーデンで。

 ある晴れた休日、習志野市立秋津小学校の校庭の、お父さんたちが以前に池や田んぼも手づくりしたビオトープ(自然観察園)周辺の、コミュニティガーデンと呼ぶ地域に開放している憩いの広場でのこと。

 「うん! いく!」と、ひがたくんは元気に応じ、しまじいに飛びつき、手を「ぎゅ」と握りしめあいコンビニに向かいました。二人のうしろ姿は、仲の良いおじいちゃんと孫の風情です。

 しまじいとひがたくんは、血縁ではありません。地域のおじいちゃんと孫、なんです。いわば「地域の家族」。

 こういった、子どもを介した地域のつながりあいを「子縁」とこの地域では呼んでいます。かつての三世代同居があたりまえであった「血縁」の単位である一世帯が小家族化し、同時に共助しあっていた暖かな「地縁」もほとんど機能しなくなった現代社会だからこそ、秋津で発見した子縁による人と人とのつながりあいが、今、とても大切なことと思うのです。

 また、しまじいのことを「コンビニおじさん」と、ひがたくんのお父さんたちは密かに呼んでいます(しまじい、バラしてゴメン!)。しまじいは、子縁でつながった子どもたちを見かけると、「コンビニいくか!」とすぐに誘い、駄菓子などを自腹で買いにつれていくからです。

 「しようがねえなぁしまじいは。高いのはダメだよ!」と、ひがたくんのお父さんがしまじいの背中にいいました。でも、内心では「しまじいはありがたいなぁ」と感謝しながらね。

 「そうなんだよなぁ、お金で子どもを釣るんだからさぁ」と、べつなお父さんが微笑とも苦笑ともつかない顔つきで追い討ちをかけました。

 「でもね、しまじいは生き甲斐なんだってさ!」と、居合わせた私は、しまじいの心情を想い救いの手を差し伸べました。

 「しまじいはね、現役のころはずいぶんと夜遊びをして無駄にお金を使ったんだってさ。で、会社を息子さんに譲り会長に退いたあるとき、僕にいったんだよね。『毎日が暇で暇でさぁ』と」「だからいったの、『劇団にでも入って芝居でもしたら』ってね!」。

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「「子縁」でつながる秋津地域のお父さん 」

著者

岸 裕司(きし・ゆうじ)

秋津コミュニティ顧問

1952年東京生まれ。広告・デザイン会社の(株)パンゲア代表取締役、習志野市立秋津小学校PTA会長時に秋津コミュニティ創設、会長を経て現在顧問兼秋津小学校コミュニティルーム運営委員会顧問。文部科学省委嘱コミュニティ・スクール推進員、学校と地域の融合教育研究会副会長、埼玉大学・日本大学非常勤講師、ほか。著書に『「地域暮らし」宣言』『学校を基地にお父さんのまちづくり』(ともに太郎次郎社エディタス)、『学校開放でまち育て』(学芸出版社)など。

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