2024年4月26日(金)

安保激変

2012年12月25日

 さらに、19日の韓国大統領選で当選した朴次期大統領が、北朝鮮への関与に関して基本、前向きな姿勢を見せていること、一方でオバマ政権は今から来年夏ぐらいまでは、1期目から2期目に政権移行するにあたっての人の入れ替わり(注:すでにジョン・ケリー上院議員が次期国務長官になる旨は発表されているが、次期国防長官をはじめ、国務・国防両省のアジア太平洋担当部局の幹部人事などはまだ固まっていない)もあるため思い切った措置をとれない現状を踏まえると、当面の間、北朝鮮との関係については、韓国の政策に引っ張られる形となる、というのが共通の見方であるようだ。さらに、今年4月の実験の際と同様、今回も、ほとんど、北朝鮮に対して影響力を行使できなかった中国が、これから北朝鮮に対しどのような対応をとるのか動向についても米国は注視を続けている。

日本が果たすべき役割

 ここまで見てきたように、米国が北朝鮮に対する今後の対応をすぐには明確に決めきれない今、日本には何が求められるのだろうか。一つ確実なことは「日米韓3カ国間の、北朝鮮情勢を巡る政策協議が滞りなく行われるよう、日韓関係は安定させてほしい」と考えていることだ。

 この点については日韓両国に不安材料がある。日本では間もなく安倍政権が誕生するが、安倍氏は、2006~2007年まで総理を務めた際、初の外遊先に韓国・中国を選ぶなど、中韓との関係改善に努力するかに見えたが、従軍慰安婦の問題が浮上して、中韓、特に韓国との関係をこじらせた。今回、前回の轍を踏まぬように、安倍次期総理が日韓関係を慎重且つ柔軟に運営できるかが一つの大きなポイントとなる。

 状況は韓国でも似ている。朴槿惠次期大統領は、1970年代に軍事独裁政権を作った朴正煕元大統領の娘であることは有名だが、朴元大統領は韓国ではしばしば「親日」として批判の対象になる。朴槿惠次期大統領は、亡父とは違う政治家だということを証明するために、日本に対してあまり柔軟な姿勢を見せられない可能性が強い。

 このように、日韓両国の指導者とも、劇的な関係改善に踏み切るための措置を打ち出すには制約を抱えている。それは理解するとしても、どうか、日米韓3カ国の協議に障害が生じることがないよう、日韓間の緊張を高めるような言動だけは慎んでほしい――それが米国が最も強く日韓両国の次期指導者に対して望んでいることのようである。


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