2024年4月24日(水)

ベテラン経済記者の眼

2012年12月25日

 故に、記者会見で白川総裁が「自民党の安倍総裁の要請をふまえて検討することにした」と発言した時点で、事実上、来月日銀がとるべき選択は明確なのだ。踏み込んだ見出しをつけた新聞は、そこまで見切った上での判断なのだろう。

 こうした状況の中で、日銀は安倍氏の意向に沿わないような決断はできないはずだ。実は、安倍氏12月23日のフジテレビの討論番組の中で、来年1月の政策決定会合で日銀が応じない場合、「日銀法を改正し、アコードを結び、目標を設ける」と述べた。「日銀法改正」という言葉は、日銀に対して政府の最大の武器になる。安倍氏がこの言葉を持ち出して日銀に迫るのは、来月の決定会合にはちゃんとやるようにとだめ押ししたことにほかならない。

日銀の「試練」は終わらない

 筆者があえて先読みするなら、1月、日銀は安倍氏の要請に沿う形でインフレ目標の設定を行うだろう。しかし、日銀にとっての「試練」はそれだけで終わらない。3月から4月にかけて任期切れを迎える副総裁、総裁の人事が待っている。勢いを得た安倍氏は政府として使いやすい人材を起用するだろう。最低でも副総裁ポストを死守したい日銀はいま戦々恐々とした思いのはずだ。

 またインフレ目標に限らず、日銀法改正で雇用安定の責任を義務づけられたり、その他の役割を押しつけられたりすることもあるかもしれない。「法改正カード」は政府の手の中にあり、陰に陽に日銀をコントロールしようとする力が当然働くだろう。2013年は日銀にとって激動の幕開けを告げる年になるのかもしれない。


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