2024年4月24日(水)

安保激変

2012年12月28日

 安倍首相はニクソン大統領のように、周到さと大胆さをもって日中関係の改善に取り組むべきだ。日中関係の安定は時代の要請である。経済、環境、エネルギー、北朝鮮、どれをとっても日中の協力は不可欠である。

 だが、日中関係の改善の前に、まず尖閣諸島の管理を確立することが不可欠だ。中国が尖閣周辺に監視船や航空機を送り込むことは、今後も常態化するという前提で対処を考えなければならない。

 従来、監視船を管轄する国家海洋局の海監総隊(海監)と農業部漁政総隊(漁政)の間では政策の調整は行われていないと考えられてきたが、尖閣周辺に毎日4隻の監視船を出す必要から両者の間で何らかの調整が始まったとみて間違いない。軍部の影響下にある国家辺海防委員会が、海監と漁政の調整機関として機能し始めているというのが大方の見方だ。実際に、人民解放軍が海監や漁政と大規模な共同訓練・演習を行うようになっている。

 一方、東シナ海を管轄する海監の東海総隊は比較的練度が高いが、最近はより練度の低い北海総隊からも監視船が出てきており、尖閣周辺の荒い波に流され、海上保安庁の巡視船に異常接近するケースも増えているようだ。このため、不測の事故が起こる可能性が高まっている。

重要なのは周辺海域と空域の支配

 総選挙直前には海監の航空機が領空を侵犯した。低空飛行だったため空自のレーダーに映らず領空侵犯を許してしまったが、海監が独自の判断で低空飛行を行うとは考えにくい。自衛隊の監視能力を知り尽くしている人民解放軍が指示をした可能性が高い。

 自民党は選挙公約で尖閣諸島への公務員の常駐を検討するとしていたが、選挙後これはすでにトーンダウンしている。公務員の常駐や施設の整備は現時点では得策ではない。中国には批判の口実を与えるし、アメリカをはじめ国際社会も日本が中国を挑発しているように思うだろう。重要なことは、周辺海域と空域の支配である。

 尖閣諸島の警備は一義的に海上保安庁の任務だ。海保の強化はほぼすべての政党が打ち出しており、すでに既定路線といえる。だが、聞こえてくるのは予算と人員の拡充と巡視船建造の前倒しだけで、抜本的な海保の強化案は議論されていない。海保の予算はイージス艦1隻の建造費程度でしかない。そのうちの半分以上は人件費で、装備に回る予算は微々たるものだ。海保は国土交通省の傘下にあるため、海保の予算も国交省の予算の総額の中で配分される。海保に十分な予算を充てるためには、国交省からの分離を検討すべきだ。


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