2024年4月17日(水)

食の安全 常識・非常識

2013年1月21日

 11月末の時点で、セラリーニ氏の研究を持ち出して「GM作物は安全性が確認されていない」とするのは、参議院議員としては不適切でしょう。それに、「雑草も害虫も耐性を持ち結局農薬の使用は増え農業は破綻してしまう」という内容も、誤解を招きます。前半の「雑草や害虫も耐性を持ち」の部分は、米国で実際にそうした現象が指摘され、同国ではたびたび報道されています。しかし、「農薬の使用は増え農業は破綻してしまう」という証拠はなく、同国の農業関係者は、問題点を踏まえ遺伝子組換え作物を上手に利用していくためのさまざまな対策を講じています。でも、日本ではどちらの動きも一般市民には伝わらないのです。

 遺伝子組換えはやっぱり革新的な技術ですから、人によって賛否が分かれるのは当然です。が、賛成するにせよ、反対するにせよ、科学的な根拠、妥当性がなければ建設的な議論とはなりません。ところが、科学的な議論どころか、その前段階の、新しい情報、世界が白熱して議論している情報が市民に届かない、という状況に、日本は陥っているのです。

 次回、昨年起きたそのほかの動きについても、駆け足でご紹介しましょう。

*後篇はこちら


<参考文献>
・Gilles-Eric Séraliniら「Long term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize」(Food and Chemical Toxicology2012)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0278691512005637
・欧州食品安全機関(EFSA)・プレスリリース
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/121128.htm
・第453回食品安全委員会(資料5として見解が明らかにされている)
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20121112sfc
・国立医薬品食品衛生研究所安全情報部・畝山 智香子第三室長の「食品安全情報ブログ」
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/
・サイエンスメディアセンター
http://smc-japan.org/?p=2886
・食品安全情報ネットワーク・青山博昭・残留農薬研究所毒性部長の解説
https://sites.google.com/site/fsinetwork/jouhou/gm_maize
・FOOCOM.NET・GMOワールドIIバックナンバー
http://www.foocom.net/category/column/gmo2/
・ILSI Japan「遺伝子組換え食品を理解するII」
http://www.ilsijapan.org/ILSIJapan/COM/Rcom-bi.php
・大河原雅子参議院議員ウェブサイト
http://www.ookawaramasako.com/?p=4106
・バイテク情報普及会
https://www.cbijapan.com/index.html
・独立行政法人農業環境技術研究所・GMO情報
「抵抗性発達が心配だから栽培しない、EUの新たな禁止理由」
http://www.niaes.affrc.go.jp/magazine/135/mgzn13504.html

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