食の安全 常識・非常識

遺伝子組換え食品 海外での“大事件”が報じられない日本(前篇)
「遺伝子組換えトウモロコシに発がん性」?

松永和紀 (まつなが・わき)  科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ライターに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008受賞。2011年4月、科学的に適切な食情報を収集し提供する消費者団体「Food Communication Compass(略称FOOCOM=フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」を開設した。

食の安全 常識・非常識

農薬や食品添加物、遺伝子組換え作物から食品偽装、さらには放射線や生肉問題まで、定期的に、頻繁に、世間の話題にのぼる「食の安全」に関するあれこれのニュース。しかし、それらに関する報道は、残念ながら消費者に誤解を与えるようなものが少なくない。食の「安全」と「リスク」を正しく理解するために、科学に基づいたニュートラルな情報や問題が起きた社会的背景などを解説し、消費者が勘違いしている食の「常識・非常識」に切り込んでいく。

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 11月末の時点で、セラリーニ氏の研究を持ち出して「GM作物は安全性が確認されていない」とするのは、参議院議員としては不適切でしょう。それに、「雑草も害虫も耐性を持ち結局農薬の使用は増え農業は破綻してしまう」という内容も、誤解を招きます。前半の「雑草や害虫も耐性を持ち」の部分は、米国で実際にそうした現象が指摘され、同国ではたびたび報道されています。しかし、「農薬の使用は増え農業は破綻してしまう」という証拠はなく、同国の農業関係者は、問題点を踏まえ遺伝子組換え作物を上手に利用していくためのさまざまな対策を講じています。でも、日本ではどちらの動きも一般市民には伝わらないのです。

 遺伝子組換えはやっぱり革新的な技術ですから、人によって賛否が分かれるのは当然です。が、賛成するにせよ、反対するにせよ、科学的な根拠、妥当性がなければ建設的な議論とはなりません。ところが、科学的な議論どころか、その前段階の、新しい情報、世界が白熱して議論している情報が市民に届かない、という状況に、日本は陥っているのです。

 次回、昨年起きたそのほかの動きについても、駆け足でご紹介しましょう。

*後篇はこちら


<参考文献>
・Gilles-Eric Séraliniら「Long term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize」(Food and Chemical Toxicology2012)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0278691512005637
・欧州食品安全機関(EFSA)・プレスリリース
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/121128.htm
・第453回食品安全委員会(資料5として見解が明らかにされている)
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20121112sfc
・国立医薬品食品衛生研究所安全情報部・畝山 智香子第三室長の「食品安全情報ブログ」
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/
・サイエンスメディアセンター
http://smc-japan.org/?p=2886
・食品安全情報ネットワーク・青山博昭・残留農薬研究所毒性部長の解説
https://sites.google.com/site/fsinetwork/jouhou/gm_maize
・FOOCOM.NET・GMOワールドIIバックナンバー
http://www.foocom.net/category/column/gmo2/
・ILSI Japan「遺伝子組換え食品を理解するII」
http://www.ilsijapan.org/ILSIJapan/COM/Rcom-bi.php
・大河原雅子参議院議員ウェブサイト
http://www.ookawaramasako.com/?p=4106
・バイテク情報普及会
https://www.cbijapan.com/index.html
・独立行政法人農業環境技術研究所・GMO情報
「抵抗性発達が心配だから栽培しない、EUの新たな禁止理由」
http://www.niaes.affrc.go.jp/magazine/135/mgzn13504.html

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松永和紀(まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ライターに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008受賞。2011年4月、科学的に適切な食情報を収集し提供する消費者団体「Food Communication Compass(略称FOOCOM=フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」を開設した。

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