2024年4月20日(土)

食の安全 常識・非常識

2013年2月1日

*前篇はこちら

 アメリカ合衆国では2012年、大統領選で熱い闘いが繰り広げられ、オバマ大統領が11月6日圧勝しました。実はこの時、カリフォルニア州では遺伝子組換えの表示義務化の是非を問う州民投票も行われました。

 合衆国政府は、遺伝子組換え作物は非組換え作物と食品として同等である、という理由で、表示を義務づけていません。そこで、カリフォルニア州で独自の表示制度の立法運動が起こり、州民投票にまで持ち込まれたのです。そして、「表示イエス派」と「表示ノー派」が激しい運動を繰り広げました。

 日本では、食品としては同等であっても消費者には区別して選ぶ権利があるとして、検査で組換えと非組換えを識別できる食品については、表示が義務づけられています。

 カリフォルニア州法案も、消費者の「知る権利」を尊重すれば当然と見えます。ところが、法案の中身や解説文書をよくよく読んでみると、じつはそれほど単純な話ではありません。

有機食品を優遇する表示制度案

 消費者の知る権利、と言いながら、制度案の細部は矛盾だらけで、消費者の知りたいことがわかる、という制度にはなっていませんでした。制度案の中で目立ったのは、有機(オーガニック)食品を優遇する項目。世界の遺伝子組換え生物(GMO)の動向について詳しい宗谷敏氏は、FOOCOM.NETのコラム「GMOワールドII」の中でこう解説しています。

 『要するに、この表示制度はGM嫌いでこの世からどうしても抹殺したい一部の消費者運動活動家と、訴訟頻発による収入目的の弁護士たちと、シェア拡大を目論む有機食品のグループに、もしかしたら有機農産物の拡販に熱心な州政府も荷担しての「消費者の知る権利」をお題目にしながら、実は市場での一人勝ちを画策する「有機食品の、有機食品による、有機食品のための表示制度」でしかないのだ。』

 (提案された制度の細部については、宗谷さんのコラムをお読みください。複雑怪奇なこの案が、4回にわたって詳細に解説されています)

 有機食品については、FAO(国連食糧農業機構)とWHO(世界保健機構)が設置した食品の国際規格を決める組織「コーデックス委員会」で、ガイドラインが定められています。その中で、遺伝子組換え技術と技術を利用して作られた生物は利用しない、と決められています。


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