ヒットメーカーの舞台裏

2013年2月11日

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池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 セメダインといえば、モノとモノをくっ付けて離れないようにする「接着剤」の代名詞になっているが、この製品は「粘着剤」だ。セロファンテープや両面テープの「ノリ」の部分に相当し、ポスターを壁に貼るなど用途はさまざま。しかも、貼り付けた後も、ゆっくり引っ張ればはがすことができるし、再び貼り付けることもできる。これまで商品化されていなかった不思議な液状の粘着剤。2012年9月に発売された。

 商品の特徴を示すため、同社は「液体の両面テープ」とも表現している。たとえば紙のポスターを壁に貼るには、ポスター裏面の四隅に「セメダインBBX」(以下BBX)を添付のヘラで延ばしながら薄く塗布する。粘着力はすぐには発生しないので、そのまま数分間放置したうえで壁に貼り付ける。

 ポスターをはがしたい時は、BBXが付いたところをゆっくり引っ張りながら取り外す。BBXはポスター側に残り、壁は汚れない。外したポスターは、そのまま別の壁に貼ることもできる。

 このように使ってみると、なるほど機能は両面テープだなと納得できる。粘着力は貼り付ける際の気温や湿度などの条件にもよるが、強力タイプの両面テープと、ほぼ同等だという。貼り付けが可能な素材は各種合成樹脂、木材、金属、ゴム、ガラスなど多岐にわたる。表面にフッ素樹脂加工が施されたものや極端に表面が粗い材料などは使えない。

 BBXの主成分はケイ素樹脂の一種である「変成シリコーンポリマー」で、大気中の水分(湿気)を吸うと粘着力が出る。前述のように対象物に塗布した後、粘着力が出るまでに時間がかかるのは化学反応するためだ。そのかわり、不快な溶剤臭はない。湿度と温度が高いほど、粘着力が出るまでの時間は短くてすむ。

 この製品が面白いのは、明確なニーズに基づいて商品化したのではないということだ。企画を担当した営業統括部のプロジェクトチームに所属する木村修司(66歳)は「具体的な用途があったわけではない。いわば“コンセプト先行型”の製品です」と言い切る。

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