2024年4月24日(水)

田部康喜のTV読本

2013年1月30日

 ドラマの原作は、乃南アサの「いつか陽のあたる場所で」と「すれ違う背中を」。上戸のこれまでのイメージをくつがえす、汚れ役である。

 飯島とともに刑期を終えた女ふたりが、過去の人生を背負いながら、陽のあたる幸せな場所に再びたどり着けるのか。

多様な日本のコンテンツならではの「相互交流」

 上戸は歌手としてデビューし、数々のCMに登場し、テレビドラマと映画の間を行き来する女優である。

 「エースをねらえ!」「アタックNo.1」などのテレビドラマ、そして映画「テルマエ・ロマエ」と、その代表作にはコミックを原作とするものが多いように思う。

 愛くるしい美少女の風貌を20代後半まで崩さず、ユーモラスなしぐさが似合う上戸が、コミックと相性がいいのはよくわかる。

 2012年の邦画の興行成績ではトップクラスとなった、「テルマエ・ロマエ」は、いわゆるタイムスリップ物である。阿部寛演じるローマ人の浴場設計者が現代の上戸の前に現れる。上戸は売れない漫画家である。

 日本の銭湯に学んで、過去にもどってローマの浴場建設に新たなアイデアを盛り込む、阿部と上戸は、コミカルな演技をこなしている。

演出家が使ってみたい女優

 コミックとテレビドラマ、映画がコンテンツとして、あるときはコミックが原作となり、テレビドラマが逆にコミックなり、テレビのアニメが映画の実写版になる。

 日本のコンテンツが、多様さを極めている「相互交流」である。

 これは現代に起きた現象ではない。江戸時代に遡れば、絵草紙が芝居になり、芝居が絵草紙になる。

 現代の映像作品は、江戸時代あるいはそれ以前からの日本の文化の伝統を引き継ぐものである。

 上戸の今日性は、優れたコンテンツといえるCMの世界と、テレビドラマ、映画を自在に行き来するところにある。


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