2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年2月22日

 これを政治傾向別に分けると、右派・宗教勢力が60議席、中道・左派勢力が60議席と、拮抗することになりました。右派勝利が予想されていたので、大方は驚きをもってこの結果を受け止めました。

 ネタニヤフ首相の率いるリクード・わが家イスラエルが42議席から31議席に減ったこと、かなりの議席を獲得すると予想された「ユダヤの家」が11議席にとどまったこと、ラピッドの率いる「未来がある」が、19議席も獲得したことがこの結果につながりました。

 第1党のネタニヤフは、中道・左派勢力を含む連立を樹立しないと安定的な政権運営を出来ない状況になりました。

 上記でマーク・ヘラーが言うように、今回のイスラエル総選挙では、国内の社会経済問題が主要な争点でした。したがって、イラン政策やパレスチナ政策については、選挙の結果で何かが変わるとは到底思えません。

 ただ過激な右派勢力、ユダヤの家が11議席にとどまり、イスラエルとパレスチナの2国家樹立による問題解決という基本は、この選挙で掘り崩されることにはなりませんでした。和平の進展にとり、最悪の結果にはなりませんでした。

 今回躍進した「未来がある」の党首ラピッド氏は、世俗主義者中の世俗主義者です。正統派ユダヤ人の徴兵免除をやめるべしと言っている人です。このラピッドの動きは一つ注目していくべきでしょう。

 オバマが次の選挙を心配せず歴史に残る業績を気にする第2期目に、中東和平にどう取り組むか、今のところ分かりませんが、就任演説を読むと、オバマは2期目に、自分のやりたいことをやる気構えのように見えます。それで中東和平に取り組むのであれば、良いことです。米国しかこの問題を動かすことはできません。

 イスラエル人は内向きになっていますが、だからと言ってパレスチナとの和平問題が消えてなくなるわけではありません。イスラエルにとっては、常に直面しなければならない問題です。中東アラブ諸国が「アラブの春」で揺れている時にはなおさらでしょう。特に、新たな入植地建設については考え直すべきかもしれません。

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