2024年4月23日(火)

安保激変

2013年2月18日

 北極海を通って大西洋と太平洋を結ぶ航路の開発は、大航海時代にまで遡る。当時のヨーロッパの探検家たちは現在のロシア沿岸を東へ、カナダ北方の島々の間を西へと進み、太平洋を目指した。そして、これらの航路はそれぞれ北東航路、北西航路と呼ばれるようになった。北西航路はこれまで商業航路として本格的な利用には至っていないが、北東航路はソビエト体制の下で北極海航路と呼ばれ、国内物流の重要な柱となった。その後、1987年のミハイル・ゴルバチョフ書記長による北極海解放演説を受けて、北極海航路への国際的関心が高まった。

 現在、地球温暖化の影響を受けて、南回りに比べて航行距離が短く、海賊の被害がない北極海を通る航路の開発に期待が高まっている。

 2009年にロシア船以外で初めてドイツの貨物船が韓国のウルサン港から北極海航路を通ってオランダ・ロッテルダム港まで航行したのを皮切りに、2011年には34隻、2012年には46隻の航行が確認されている。2012年12月に公表された「世界潮流2030」は、2030年には北極海を年間110日間以上安定的に航行できるようになると予想している。 実際、中国は2009年以降すでに北極海航路を通じて鉄鉱石やガス・コンデンセートの輸入を始めているし、2012年12月には九州電力が北極海航路を通じて世界で初めてLNG船による調達に成功している。

 北回りの航路が開通しても、海氷が完全になくなるわけではない。冬期には海氷面積は増えるし、夏期でも大小様々な流氷が漂うため、海運業界は採算性を慎重に検討している。北極海のような結氷海域では耐氷能力を備えた船舶が必要となるし、事故の際の捜索救難や油流出への対処は困難を極める。このため、国連海洋法条約は沿岸国が排他的経済水域において環境保護を目的として通航に一定の制限を課すことが認められている。これに基づいてロシアは水先案内人の乗船や原子力砕氷船によるエスコート料金の支払いを外国船に義務づけている。また、カナダは北西航路を自らの内水とみなして、外国船に通航の24時間前までの通告を義務づけている。

高まる資源開発への期待

 北極圏では、これまで氷に閉ざされ手の届かなかった資源開発への期待も高まっている。

 アメリカ地質調査所は、北極圏には900億バレルの原油、500億立方メートルの天然ガスが眠っているとの分析結果を発表している。 地球全体からみれば、7パーセントの原油、25パーセントの天然ガスがこの地域に存在することになる。これら天然資源の60パーセント以上がロシアの管轄地域にあり、ロシアが北極圏の開発への投資を拡大する一方、BP社やシェルをはじめ世界のメジャー企業も関与し始めている。この海域にはまた、金・銀・銅・亜鉛・ダイアモンドなどの鉱物資源も確認されている。


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