2024年4月26日(金)

WEDGE REPORT

2013年2月21日

 ウルグアイ・ラウンドもEPA交渉もいずれの場合も国会で「批准手続き」を経なければ効力を発生しない。選挙で選ばれ、国民の負託を受けた国会議員がこの手続きの中で交渉結果が国益に適うか否かを議論し、決定する。これまでいずれの協定も国会では圧倒的多数で批准されてきている。しかし、TPPではどうか? 前向きなのは「みんなの党」と「日本維新の会」だけで、自民党も民主党もTPPに慎重な国会議員が多数を占めている。

 昨年12月16日の衆議院選挙を経た後の政権交代後も事態は変わっていない。いやむしろ悪くなっているかもしれない。1月23日に会合を開いた自民党の「TPP参加の即時撤回を求める会」は会員が203人となり、党所属議員の過半数に達した。この内の約160人の議員は先の選挙で「TPPに反対すること」を条件にJA農協からの支援を受けており、残りは同じ条件で7月の参議院選挙でJA農協からの支持を獲得しようとしている。このままでは7月の選挙までは安倍政権としてTPPに乗り出すことができず、それでは10月のTPPの「大筋合意」まで時間がなく、交渉の余地が全くなくなってしまう公算が大きい。

 国会議員は交渉のいわば「入口」におけるブロックを直ちに解除し、政府にまずは交渉させるべきである。憲法第73条には、内閣の行うべき事務として「条約を締結すること」とあり、続いて「但し、(中略)事後に、国会の承認を経ることを必要とする」と規定している。交渉の「出口」に相当する批准手続きで交渉結果が国益に適わない内容であればそこで否決できるのだ。まだ交渉も終わっていないTPP交渉の「入口」で「反対」と叫ぶのは憲法の規定に照らしてもおかしいのである。

 今重要なことは日本がTPPの発足当初からのメンバー国になれるかどうか、である。というのは、国際協定の原加盟国になるか、あとから入る追加加盟国になるかは大きな違いがあるからだ。日本自身がこのことを過去に痛いほど経験している。

 貿易立国として第二次世界大戦後再スタートした日本にとって、GATTに入れば最恵国待遇や内国民待遇が与えられ、差別されることなく貿易できる。だから日本の戦後経済外交の最優先事項はGATT加入だった。アメリカの支援があり、53年にようやくオブザーバーとして準加盟したものの、正式加盟にはさらに2年かかり、加入が認められたのは55年のことだ。しかし、それで終わりではなかった。日本の正式加入が承認されたそのGATT総会で英国やフランスなど西欧諸国を中心に14カ国が日本に対して「拒否権」に相当するGATT第35条を援用、日本に対してGATT上の権利を一切与えないとの立場をとった。戦前日本の不正商品貿易や賃金水準の低さを勘案して、日本と対等のGATT関係に入るのは得策ではないと判断したからだ。この対日差別的なGATT第35条の援用を撤回してもらうため、日本はやむなく英仏等に対し「対日差別数量規制」を認めたり、輸出の「自主規制」をしたりすることを余儀なくされた。後追い参加はいわば「入場料」が高くつくのである。

 これに対し、WTOではどうだったか? WTOはGATTの最後の多国間貿易交渉となったウルグアイ・ラウンドの8年に及ぶ交渉の結果をまとめたものである。日本はこの交渉の立ち上げからアメリカやEUと共に積極的に関わった。その甲斐あってブラジルやインドなど強硬派途上国の反対を抑えて、サービス貿易、知的所有権、投資措置の「新分野3点セット」が合意され、WTOの包括的な貿易体制が95年にスタートした。日本はもちろんWTOにおいては「原加盟国」である。


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