日本の漁業は崖っぷち

2013年2月22日

»著者プロフィール
閉じる

片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 モスクワの中心部で、ファストフード大手のマクドナルドの品質保証・供給網責任者が「ロシアの魚は使っていません」と言い切ったそうです。同社の「フィレオフィッシュ」はロシアでも人気があり、原料に使用されるスケトウダラの漁獲量は160万トン(2012年)とロシアが世界最大の漁獲量を誇ります。それなのに、なぜ自国の魚を使用しないのでしょうか?

 その理由は、持続可能な漁業で漁獲している水産物であることを証明する水産エコラベルの一つ「MSCマーク」を使用していないからなのです。

消費者が資源管理されたものを選ぶ傾向が強い欧米

 MSCマークとは、水産エコラベルの一つで消費者の水産資源管理についての関心を高め、消費者の購買行動を通じて、持続的な水産物の生産を促進することを目指し、世界自然保護基金(WWF)とユニリーバが1997年に設立し、イギリスに本部を置く海洋管理審議会(MSC)が1997年から認証を開始したものです。水産エコラベルとしてはこの他にも、日本では2007年より大日本水産会がマリンエコラベルを取り入れています。アイスランドでも2010年より独自のラベルを取り入れました。この他にFAO(国際連合食糧農業機関)による認証もあります。

 マクドナルドは2011年、欧州39カ国、7,000店でMSCマークの取り入れを決めました。同社で2010年度に欧州39カ国で販売されたフィレオフィッシュは1億食だそうです。欧米では資源管理に関する消費者の意識が強い傾向があります。そして欧州に続き、2013年2月には、本家の米国でも欧州の2倍に当る14,000を超える店舗で原料の白身魚のすべてを、MSC認証を受けた漁業からの製品にすることにしたのです。全米外食チェーンでは初の試みだそうです。今後同様の行動が増えてくるものと予想され、消費者が資源管理されたものを選ぶ傾向が強まっていくことでしょう。

エコラベルの有無で売れ行きも異なる

著者がデンマークで撮影した、マリンエコラベル(MSC)が付いた加工品

 欧州市場では、同じスケトウダラでも、水産エコラベルが付いている米国産の販売と、付いていないロシア産では売れ行きが決定的に異なってきています。2011年は、米国産のスケトウダラフィレーの販売が前年比4割増に対し、ロシア産が減少、とMSCマークの有無により販売格差がついてしまいました。ロシアとしては自国で漁獲したスケトウダラを中国で加工し、欧米の輸出を増やしていた矢先にMSCマークがないのを理由に買ってもらえなかったり、買いたたかれたりするようになったのです。ロシアスケトウダラ協会は「これは200海里規制の大波と同じだ。でもこれに追いついていかないといけない」とコメントしています。ロシアは必死に巻き返しを図っているところです。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る