2024年4月20日(土)

うつ病蔓延時代への処方箋

2013年2月26日

―― 職場のうつに関しては、働く場が要因になっている場合、その解決に向かう前提になるのは経営者の理解ですが、実はこれが一番の難関。職場のうつ対策は経営の一環だと声を大にして訴えていかなければいけないと考えています。

天野常彦さん

天野:すべての会社でメンタルヘルス対策を推進するべきです。その役に立ちたいと思いコンサル活動を開始しました。そのベースになるのはオリンパスソフトでの取り組みです。私自身が経験し学んだことを、悩んでいる企業に伝えていくことができれば、との思いを強く抱いています。

 多くの企業でメンタルヘルス対策を進めようという動きはありますが、経営層の理解が得られず、人的な面や予防措置などの投資ができない。私は活動を通して、慈善事業のように受け止める経営者層にメンタルヘルスは福利厚生ではなく、利益に結びつくことを具体的に話しています。

 売上げを増やし利益を出すことを考えるのが経営者の役割ですが、その過程で社員の5%がメンタル不調者になれば、事前に対策しておけば本来必要のないコストをどれだけを出すことになるのかを知ることが重要です。30億円の売上規模、社員数は約400人で5%の休職者がでれば不要なコストは1億円という例もあります。休職者への給与、習熟した社員の代わりを入れることは容易では無く、かなりのコストが膨らみます。利益を出すためにはコストは下げるのではなく不要なコストを発生させないことが大切です。ほんの少しの工夫、体制を変えるだけで防ぐことができます。

社内に歪を作る経営者だけの米国化

―― 米国流経営を志向する流れが日本の経営者にみられます。しかし、日本の社会や制度は昔のままで、そこにギャップが生じ働く社員に過度なストレスを与えてしまっている面もあるように思います。

天野:運転資金を銀行からではなく、投資家から調達する役割を担うようになった経営者の多くが米国化していると見ることができます。しかし、社会全体の考え方が違うのに無理やり押し付けると、どこかに歪が生じるのは当然のことでしょう。米国は日本と比べメンタル不調者はかなり多いというデータを目にします。しかし、米国の企業はEAP(従業員支援プログラム)を活用して社員へのサポートをすることが一流企業の証となっており、カウンセリングなども十分に整備されています。


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