研究と本とわたし

2013年2月27日

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中田正則 (なかた・まさのり)

フリーライター

1956年京都府生まれ。早稲田大学卒。出版社等勤務を経て1986年に独立。以来、主として雑誌媒体で、ビジネス・経済・経営・人事分野の取材記事やインタビュー等を中心に執筆。

 第2回は東京大学法学部の久保文明先生。アメリカ政治を専門に研究されています。私たちは日常的にアメリカの情報に触れているように感じていますが、意外にもアメリカ政治の専門家は少ないそう。元々理科系だったという久保先生がなぜ政治学の研究を志すようになったのか、きっかけとなった読書体験を伺います。

——はじめに本との関わりというところからお聞きしたいのですが、子どもの頃よく読んだ本というのはありますか?

久保文明氏 (撮影:ウェッジ書籍部)

久保文明氏(以下、久保氏):両親とも大学の教員をしていたこともあってか、家にはたくさん本がありました。子ども向けの本はそれほど多くなかったのですが、例えば『やかまし村の子供たち』などの『リンドグレーン作品集』(岩波書店)や、『ナルニア国物語』(岩波書店)は、何度も読んだのでよく覚えています。

 もともと外で虫やザリガニを採ったりして遊ぶのも好きで、小学生になったあたりからは、『シートン動物記』などの生き物や自然に関する本を読むようになりました。また、小学校の図書室に子ども向けのシャーロック・ホームズやアルセーヌ・ルパンのシリーズがあって、次から次へと読んだ記憶があります。

 マンガも好きでしたよ。「伊賀の影丸」などが連載されていた『週刊少年サンデー』や、『週刊少年マガジン』は、定期購読したかったのですが、親はダメだと言う。その辺は路線の違いがありましたね(笑)。それでもしぶとく読んでいました。

――当時、特に感動した本があれば教えてください。

久保氏:中学生のとき、国語の教科書に「銀の燭台」という短い文章が載っていました。つまり『レ・ミゼラブル』(新潮文庫他)の、ほんの一部なんですね。もっときちんと読んでみたいと思って、原作に挑戦しました。文庫本で5冊もあって、しかも、パリの下水施設がどうしてできたかといった、本筋とは関係のないような話が延々と出てきたりする。読み通すのは大変でしたが、その壮大なストーリーと、それを構築していく構想力は、それまでに読んだどの本よりもすごいなと感じて強く印象に残っています。

 研究対象としての歴史は、当然ながら自分でフィクションをつくってはいけないわけですけれども、想像力は必要です。その意味では、『レ・ミゼラブル』の魅力は今の自分の研究とも通じる部分があるのかもしれません。

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