2024年4月23日(火)

研究と本とわたし

2013年2月27日

――直接現在の研究とつながるような本と、最初に出合ったのはいつ頃でしょうか?

久保氏:高1のときの世界史の授業は最初に帝国主義の時代を取り上げたので、何となく気になったのが、たまたま父親の本棚にあった『帝国主義の時代』(江口朴郎著・岩波全書)でした。最初は難しそうで、ちょっと目を通すだけのつもりだったのですが、教科書に書かかれていないことも載っていて、とてもおもしろい。気がつくと、結局全部読み通していました。

 その後、政治経済の先生の推薦で読んだ、丸山眞男の『現代政治の思想と行動』(未来社)などと併せて、歴史や政治への関心が高まるきっかけになった本です。

 とは言っても、その頃は大学を出て何をする、というところまではあまり考えていませんでした。私は生物が大好きだったし、実は高3の夏までは、大学は理系の学部に進むつもりでいたのです。でも夏休みのある日、風呂に入っていたとき、何かもう少し社会と関わるような勉強がしたいという思いが突然湧いてきましてね。そこから文系に方向転換したわけです。両親も先生も驚いていましたけどね。

 今から思うと、中学生の頃から歴史は好きだったし、そのときすでに『帝国主義の時代』などの本を読んだりして、さらに興味も強くなっていたので、そういう勉強をしたいなという気持ちが根底にあったのでしょうね。父親に「現代史の研究って、おもしろいのかな?」と訊いたら、「歴史の研究というのは、現場に行って古代の遺跡を発掘したり、結構身体を使ってやるもので、現代史なんか怠け者のやることだ」と言われたのが、すごく記憶に残っています(笑)。

――その頃から研究の道に進むということを、漠然と考えておられたわけですね。

久保氏:ただ大学に入った当初は、法律に対する関心がとても高くて、社会派の弁護士に憧れていました。ところが法律の授業に出てみたら、とにかく徹底的につまらない(笑)。自分には何が面白いのかがよくわからなかった。一方で次第に興味をひかれるようになったのが、政治学関係の科目です。

 最初は日本やヨーロッパの政治史に対して非常に関心が高まったのですが、大学3年のときに、恩師である斎藤眞先生の「アメリカ政治外交史」という授業を受けたのが、大きな転機になりました。そのときに読んだのが『アメリカ政治外交史』(斎藤眞著・東京大学出版会)です。

 斎藤先生の講義は語り口が明快で、その印象は本でも同じでした。文章は今読むと少し昔風なところはありますが、比較的読みやすいですしね。

 また、当時授業の参考文献として示されたのが、『アメリカ現代史――改革の時代』(ホーフスタッター著・みすず書房)。後に私が初めて書いた研究論文のテーマは「ニューディールの農業政策」なのですが、そのきっかけになったのがこの本です。


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