2024年4月25日(木)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2013年2月26日

 欧州諸国では、マイナス成長になってもインフレは2%前後からなかなか下がらない。たとえば、欧州委員会は2012年のユーロ圏の実質GDP成長率をマイナス0.5%(速報値)と公表しているが、消費者物価上昇率は2.5%(暫定値)だ。2013年についても、経済成長率マイナス0.3%と物価上昇率1.8%の見通しで、デフレになるとは全くみていない。

 さらに、欧米諸国と日本の消費者物価上昇率を90年代後半以降で見比べると、興味深いことがわかる。図表1をもう一度みてもらいたい。欧米の消費者物価上昇率は、いずれも2%程度に収れんしている。一方、日本は0%程度に収れんしている。日本と欧米諸国の消費者物価上昇率は2%程度の差でここ15年あまり安定しているともいえる。

 それは、日本と欧米ともに経済金融動向以外の要因が消費者物価に大きく関係しているからに他ならない。そして、その要因の主たるものとして、日本と欧米の物価マインドの違いが挙げられる。経済状況の違いなどを背景に、欧米主要国では2%程度のインフレを適度と見る一方、日本では価格が上がらず下がらずのゼロ近辺の物価水準を居心地がよいとみる違いだ。

 物価マインドの違いを前提にすると、日本で物価水準を2%に上げるには、好景気や円安を下支え要因としつつも、物価マインドを欧米並みに引き上げることが欠かせないということになる。

物価マインド向上がアベノミクスの一核心

 物価目標2%は、図らずも日本と欧米主要国との人々や企業の物価マインドの違いまでも浮き彫りにしたようにみえる。

 そして、日本がゼロ近辺の物価水準を基準とみるような物価マインドの背景に、90年代以降の低成長や賃金下落への抵抗感が薄れていることもあるだけに、物価マインドの引き上げは容易ではないようにみえる。


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