世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年3月6日

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 1月29日付米Wall Street Journal紙で、Michael O'Hanlon米ブルッキングス研究所上席研究員は、米国防費の削減に関して、大きな数字の議論をするよりも、米国の安全保障上の戦略的観点から、必要性の議論をすべきである、と論じています。

 すなわち、「国防費削減」をめぐって様々な数字が飛び交い、議論が混乱している。しかし現行法によれば、10年間にわたって3500億ドルといったところだろう。

 国防費削減が米国の安全保障にどの位のダメージを与えるかについても、議論は収斂していない。

 削減支持派は、米国の国防費は中国の国防費の3倍であり、全世界の国防支出の40%も占めていると言う。一方、削減反対派は、世界は依然として危険に満ちているのに、米国の国防費はじきにGDPの3%分に落ちてしまうと言う。

 自分(オハンロン)は、大きな数字を議論するよりも、実際の戦略上の必要性に基づく議論をすべきだと考える。そこで現在のオバマ政権が提示している、3500億ドル(10年間)削減された国防費をベースに考えてみる。これは兵力を150万人から140万人に削減し、9月11日事件以前の水準、冷戦時代の3分の2の水準に戻すものである。

 この中から何をさらに削減できるか。戦術的なアプローチとしては、(1)基地の一層の閉鎖、(2)陸軍、海兵隊兵力を更に削減する、(3)海軍は286隻を維持するが、兵員の交代は航空機で行う等の経費節減をする、(4)F-35の2500機購入計画を半減させる、(5)SSBN(戦略核ミサイル搭載原子力潜水艦)近代化の代わりに、現行トライデント・ミサイル搭載原潜を改装、増産する、(6)軍人の給与、健康保険、年金等の削減、が挙げられる。

 大きなリスクを伴う、戦略的なアプローチとしては、(1)陸軍、海兵隊兵力の25%削減、(2)ブッシュ第1期当初より一人当たり年間25000ドル多くなってしまった軍人給与を2001年の水準に戻す、(3)F-35の生産を止める、が挙げられる。

 上記を実行すれば、「10年間で5000億ドル削減」は達成できる。しかし、米国の安全保障に影響を与える話であり、荒っぽい数字をもて遊ぶのはやめた方が良い、と述べています。

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 この論評が掲載された後の1月31日、米国上院は、国債発行枠発動を5月まで延期しました。このことで、「財政赤字削減の合意と法制化ができなければ、連邦歳出を強制削減(国防費は10年間で5000億ドル削減)する」という既定方針の実行はうやむやになりました。しかし、国防費削減という方向性は不変のようです。

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