2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2013年2月27日

 尹炳世外交部長官はキャリア外交官の出身で、金室長と全く同じように、そのプロフェッショナリズムが評価された。盧武鉉元大統領の下、国家安全保障会議(National Security Council:NSC)事務処政策調整室長、外交通商部(当時。現在、通商交渉機能は産業通商資源部に移管し、外交部に縮小再編する政府組織法が国会に係留中)次官補、統一外交安保政策首席秘書官(当時。現在は外交安保首席秘書官。盧元大統領が「外交国防統一」の中で「統一」を重視した証左)など要職を歴任したが、「政策に前歴は関係ない」として信任された。選挙キャンプでは外交統一推進団長、大統領職継承委員会では金室長が幹事を務めた「外交国防統一」分科で「外交」を担当するなど、「国防」と「外交」の違いはあるが、金室長とパラレルなコースを辿った。元々は、北米第1課長、駐米公使を歴任した「米国通」である。

 金秉寛国防部長官は、金室長より1期下の制服組である。金室長と同じく米韓連合司令部副司令官を歴任していて、米韓同盟に精通している。

 柳吉在統一部長官は、北朝鮮研究のメッカである北韓大学院大学校の教授で、北朝鮮研究の第一人者である。強硬策でも宥和策でもない「朝鮮半島信頼プロセス」の立案に関与したと言われている。

 朱鉄基外交安保首席補佐官は駐仏大使・駐UNESCO大使を歴任したキャリア外交官で、ヨーロッパ通、マルチ外交の専門家として知られている。

対韓外交は大統領本人に照準を合わせよ

 このように、朴大統領の外交安保政策は、組織や人事から読み解く限り、大統領府と内閣の要職にそれぞれプロフェッショナルを配置しつつ、大統領府の国家安保室長を通じて「外交国防統一」を「国防」や「国家安保」の観点から統合する布陣になっている。自らの意向を政府組織に貫徹し、そのまま実現するべく、内政以上に、「大統領親政体制」を敷いたというわけである。

 だとすると、こうした韓国とやり合っていく上で日本として重要なのは、全てを掌握している朴大統領本人にいかに話をつけるのか、ということである。もちろん、実務レベルで積み重ねて、粛々と進めるべき事案はあるし、それはそれとして進めればいいが、いざ事が起きたときに外交部では話が通じないことはある。昨年8月、李前大統領が竹島上陸を決行した際、そもそも外交部は蚊帳の外で、何も知らされていなかった。

 つまり、安倍官邸のカウンターパートは大統領府であるべきだし、安倍外交の照準は、究極的には、朴大統領一人にピンポイントで定めるべきである。

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