プーチンの威信をかけた
ソチ冬期五輪まで1年

遅れる会場建設、テロ対策、マフィア抗争…課題は山積み


廣瀬陽子 (ひろせ・ようこ)  慶應義塾大学総合政策学部准教授

1972年東京生まれ。専門は国際政治、コーカサスを中心とした旧ソ連地域研究、紛争・平和研究。主な著作に『旧ソ連地域と紛争――石油・民族・テロをめぐる地政学』(慶應義塾大学出版会)、『強権と不安の超大国・ロシア――旧ソ連諸国から見た「光と影」』(光文社新書)、『コーカサス――国際関係の十字路』(集英社新書)【2009年アジア太平洋賞特別賞受賞】など。

解体 ロシア外交

紛争、エネルギー、政治、経済など様々な外交カードを所持し、それを絶妙なタイミングで切るロシア。日本の隣人でありながらその内側がなかなか見えない大国に、不気味な印象さえ抱く。ロシアの外交、そしてその動きの背景を、ロシアと周辺国事情に詳しい著者が読み解く。

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2014年2月7日から23日まで開催される予定のソチ冬季五輪開始予定のソチ五輪まで1年を切った。既に、聖火は2012年10月7日に五輪発祥の地・アテネからモスクワに到着し、聖火リレーが進行中だ。来年2月にソチに到着するまで、約1万4000人の手を経て、北極圏を含むロシアの広大な国土をリレーし、その総距離は冬季五輪史上最長の6万5000キロに及ぶといわれている。また、聖火を宇宙に運ぶ計画もあるが、その詳細は3月に発表されるという。

 そして、2月7日には、ソチの五輪講演でプーチン大統領や国際オリンピック委員会(IOC)のロゲ会長が出席し、開幕1年前を祝う式典が華やかに開催され、世界各地から多くの国内オリンピック委員会(NOC)が招待された。式典では、ロシアのメダリスト達が華麗なフィギュアスケートを披露するなど、会場は大いに盛り上がった。さらに、首都モスクワなどロシアの8都市で、開幕までの残り時間を示すカウントダウン時計のスイッチがロシア人メダリスト達によって入れられ、時を刻み始めた。国内での入場券販売も開始され、五輪に向けて、ロシア各地で熱気が高まりつつある。

ソチを世界規模のリゾート地に

 ロシアでの五輪は、冷戦時代に西側諸国がこぞってボイコットした1980年のモスクワ夏期五輪以来2度目だが、冬期五輪の開催は初であり、かつ冷戦期の五輪参加国がかなり限定されていたことから、ソチ五輪が持つ意味はロシアにとって極めて大きい。

 ソチは黒海沿岸の都市で、極めて温暖で過ごしやすい地であり、夏は海でのレジャー、冬は雪山スポーツをエンジョイできる昔ながらの観光地、保養地である。ソ連時代から、多くの政治家や著名人が別荘を有し、長期休暇を過ごしてきた。

 この温暖な地は、多くのアスリートも輩出してきた。たとえば、女子テニスで有名なマリア・シャラポワはソチで4歳からテニスを始め、才能を発揮したといわれる。

 ロシアは、ソチ五輪を機に、ソチを世界規模のリゾート地として発展させようとしている。ソチでは、2014年にはロシアで初の開催となる自動車F1シリーズ開催も予定され、今年の2月4日には、2014年の主要国(G8)首脳会議がソチで開催されるという大統領令も出された。さらに、ソチは、2018年のサッカー・ワールドカップロシア大会でも試合会場の一つになる模様だ。

 2007年にソチが五輪開催地に決定した際、プーチン大統領は当時の為替レートで1兆5000億円規模の予算を投じて関連施設を整備すると発表し、以後、建設ラッシュが続いている。同時に、リゾート地としての開発やエネルギー供給のためのインフラの整備なども進められている。やはりソチ五輪を機に、ソチを大リゾート地として世界に売りだしたい考えだ。

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著者

廣瀬陽子(ひろせ・ようこ)

慶應義塾大学総合政策学部准教授

1972年東京生まれ。専門は国際政治、コーカサスを中心とした旧ソ連地域研究、紛争・平和研究。主な著作に『旧ソ連地域と紛争――石油・民族・テロをめぐる地政学』(慶應義塾大学出版会)、『強権と不安の超大国・ロシア――旧ソ連諸国から見た「光と影」』(光文社新書)、『コーカサス――国際関係の十字路』(集英社新書)【2009年アジア太平洋賞特別賞受賞】など。

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