2024年4月25日(木)

佐藤忠男の映画人国記

2013年3月22日

 監督には前橋市出身の小栗康平がいる。妥協のない芸術性に徹した映画づくりを続けており、国際的にも一流と評価されている。1996年に県の記念事業として作った「眠る男」も純粋に美の探究一途の力作だった。「埋もれ木」(2005年)も自分の芸術的信条にあくまでも忠実な美しい作品である。しかしいちばん観客に愛されたのはデビュー作の「泥の河」(1981年)だろう。

 曽根中生は北群馬郡子持村(現渋川市)の出身。ロマンポルノ時代の日活で監督になり、茶目っ気のある面白い作風で評判になった。ポルノ以外にも「嗚呼!!花の応援団」(1976年)や「博多っ子純情」(1978年)が面白い。1990年頃から行方不明になり、2011年に自分の作品が上映されている映画祭にひょっこり現れて驚かせた。ぜんぜん別な仕事で忙しかったのだそうである。

 清水崇は前橋市生まれ。ホラー映画に才能を示す監督になり、「呪怨」(2002年)はアメリカやヨーロッパで評判になった。怪談の伝統を生かした怖さが受けたようだ。

 映画史家で『日本映画発達史』(中央公論社)という名著がある田中純一郎(1902-89年)を記念して出身地である新田町(現太田市)が、日本映画史をテーマとした映画祭を行っていたこともつけ加えておきたい。 (次回は岩手県)

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